『ガルパン』は新作のたびに発見しかない! 『最終章』へ引き継がれた”侮られた者の逆襲”
映画『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話が上映中だ。OVA形式であり、前作から2年近く上映までの期間が空いたが、それだけの制作期間が必要だったと誰もが納得するほどの力作であり、今作が完結した際は日本アニメ史に残るシリーズになると、改めて再確認した作品だった。
今回は『ガールズ&パンツァー』が、この約10年で果たした数々のアニメの楽しみ方の変化を改めて振り返り、『ガールズ&パンツァー 最終章』で描かれているテーマについて考えていきたい。
まずは簡単に『ガールズ&パンツァー』シリーズについて振り返っていきたい。2012年10月にTVアニメが放送開始し、女子高生×戦車という異例の組み合わせが話題となり多くのファンを獲得した。2010年代前半は萌えアニメブームもあり、女の子がたくさん活躍するアニメが特に人気を博した時期でもあるため、その時流も味方につけた。当時の日常系ブームに絡めるならば、戦争の日常系化を果たした作品といえるだろう。
一方で可愛らしいルックスの女子高生が戦うというコンセプトだけではなく、しっかりと練られた戦車戦とその見せ方にも圧倒された。キャラクターのルックスを応援する“萌え”と、戦車戦の熱い戦いを応援する“燃え”が融合し、高い評価を獲得した。かわいらしいキャラクターを愛するアニメオタク層とミリタリーオタク層は近いようで必ずしも一致するわけではないが、その両者を魅了した作品となった。
その後OVAが発売し、2015年には『ガールズ&パンツァー 劇場版』が公開される。TVシリーズの人気キャラクターが全員参加するオールスターである点に加えて、映画ならではの圧倒的な戦車戦の迫力に多くのファンが度肝を抜かれた。2015年は劇場の座席が動く4DXが日本で普及し始めた頃と合致し、『ガールズ&パンツァー 劇場版』と4DXの相性の良さが大きな話題となるなど、アニメ映画の鑑賞方法そのものにも影響を及ぼした。今シリーズがなければ、アニメ映画と4DXの相性が良いと気が付かれず、密接に関わり合うのはもう少し遅くなったかもしれない。
『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話では、その迫力のある戦車戦の映像表現がさらに進化している点に注目してほしい。雪山を舞台とし、CGを駆使したアニメーション表現は、実写では不可能なほど激しく動き回り、しかも長時間派手な戦闘が繰り広げられる。筆者は鑑賞直後、もしかしたら戦車戦で今作を超える映像表現は、アニメと実写も問わず、今後現れないのではないか? と考えたほどだ。
現在4DXで上映している劇場はないと知っていたが、自分が知らないだけでどこか上映している劇場はないかと、同じような行動をしたファンもいるのではないか。おそらく4DXで上映されたら日本中の4DXシアターを動員しても足りないのではないか、と考えるのも夢想ではないと納得されるだろう。圧倒的迫力の映像表現がアニメファンにしか知られていないとしたら、これほど悔しいことはない。
同時に作品の舞台になった茨城県の大洗町に多くのファンが訪れた。舞台巡りとして人気を博し、大きな経済効果を発揮した。当時は『らき☆すた』の埼玉県久喜市の鷲宮神社をはじめ、アニメの舞台となった町に訪れる舞台巡りの楽しみ方が定着しはじめた頃であり、特に大洗町は町全体で積極的にファンを募ったこともあり、成功例の代表的存在である。このように『ガールズ&パンツァー』を振り返るだけでも、2010年代のアニメと取り巻く周囲の文化や楽しみ方が変化していき、多くの経済効果や文化的な発展を繰り広げたエポックメイキングな作品であることがわかる。