『ガルパン 最終章』最高峰に到達したアクション作画 第4話は戦車道を通じた成長譚に
ミリタリー映画を観に行ったらアクション映画を観せられた。アニメ『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話の上映が始まって、劇場に足を運んだ人に浮かぶ感想は、これまでの『ガルパン』シリーズとは少し違ったものとなっている。主人公はいったい誰なのかといった問題もつきつけてきて、これからの展開を大いに楽しみにさせた。
「今の映像芸術のアクション部門では、最高峰と言っていい」
10月3日に行われた『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話のDolby Atmos版試写会で、ティーチインに登壇した岩浪美和音響監督が繰り出した作品への賞賛だ。10月6日から始まった上映を観た人なら、首を縦にブンブンと振って同意の気持ちを表すだろう。
例えるなら、ジョージ・レーゼンビーが1回だけジェームズ・ボンドを演じた『女王陛下の007』で後年に強い印象を残すことになったスキーでの大追跡、『おおかみこどもの雨と雪』で井上俊之が作画した子供の狼たちが新雪の中を駆け回るシーン、そうしたものを思い起こさせつつ、それがどうして戦車によって行われているのかといった驚きで呆然とさせられる。そんな空前絶後のアクションシーンが、スクリーン狭しと繰り広げられるのだ。
あり得るか、あり得ないかといった懐疑は『ガルパン』では無意味だ。劇場版でC-5Mスーパーギャラクシーが戦車を8輌も積んで学園艦から離陸しても、だって『ガルパン』だからと誰もが笑顔でスルーしたように、第4話に描かれた対継続高校戦でのスピーディーでアクロバティックな戦車戦も、面白いじゃないかと受け止めるべきなのだ。たとえ計算的に世界最高峰を上回る距離を進んでいたとしても、それが『ガルパン』世界なのだと思えばいい。それだけだ。
あとは、そこで描かれるアクションに目を奪われよう。『ガルパン』だけあって確かに戦車同士が戦っている。けれども浮かぶのは、『マクロスΔ』でメッサーと白騎士がドッグファイトを繰り広げているシーンや、『機動戦士ガンダム』シリーズでモビルスーツが敵味方入り乱れて戦っているシーンといった、メカによるバトルアクションだ。
ここで、『ガールズ&パンツァー 最終章』の3DCGI監督を務めている柳野啓一郎の存在がクローズアップされてくる。3DCGで戦車をモデリングして並べ、動かすことがひとつの仕事になるが、その時に戦車の1台1台にしっかりと演技を付けるという。10月3日のティーチインでは、岩浪音響監督と共に柳野3DCGI監督も登壇して、そうした戦車の“演技”について話していた。
「名前のないキャラクターが乗っている戦車でも、1発1発を本気で撃っているし撃破しに向かっているという考え方から作っています」と柳野3DCGI監督。そうすることで、「戦車の演技ができてきて、生きている人たちが動いているようなことが起こり始めるんです」。そう聞いて思い起こすと、1年生ばかりが乗ったウサギさんチームはいつもちょこまかとして若々しく、自動車部が狩るレオポンさんチームのポルシェティーガーはレーシングカーのような挙動を見せている。
そうした戦車の個性を意識したアクションが、第4話の雪山でのシーンでもしっかりと行われている。柳野3DCGI監督は特技監督として、シーンの見せ方にも深く関わっている。アニメ業界で「特技監督」とは板野一郎という名アニメーターが『マクロスプラス』や『マクロス ゼロ』で名乗った肩書きで、戦闘シーンに更なる迫力をもたらした。柳野3DCGI監督はその板野の下で仕事をした経験の持ち主。第4話では“板野サーカス”と呼ばれるような、グッと近づきフッと消えてはパッと現れ撃ち合うスピーディーでアクロバティックなメカバトルを、戦車でやってのけた。
「高速戦闘の中で、1つ1つのキャラクターたちが考えながら動いているかを意識しました」と柳野3DCGI監督。「アクション密度が高いので、初見では迫力や流れを楽しんでください。2回目以降は、アクションのひとつひとつに意味がある形で演技をさせているので、それを発見していただけるとありがたいです」。次に観に行く時は大いに気にしよう。