『ガルパン 最終章』における最大の挑戦 第3話に示された“世界観の深化”が意味するもの

この記事は『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話のネタバレを含みます。

 萌え系でありながらも硬派。テレビアニメ(OVA)でありながら映画。エンタメでありながらも実験的。異なる要素を違和感なく同居させている作品が『ガールズ&パンツァー 最終章』シリーズだろう。人気シリーズの3話が公開され、劇場に多くの人が詰めかけている。

『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話公式サイトより引用

 本作はテレビアニメから始まった『ガールズ&パンツァー』シリーズの最終章として、全6話を劇場公開するというプロジェクトだ。1話あたり約50分ほどと考えると、映画というよりもOVAの特別上映に近い形態だ。それでいながらも約1年半かけながら制作された本編は、劇場で観なければ真価を発揮できないと思うほど映像、音響などのクオリティが高く、“映画”と名付けるのにふさわしい作品だ。

 1話50分と考えるとテレビアニメ2話分、合計12話相当になり、ほぼテレビシリーズ1クール分に該当する。それを数年かけて劇場上映というのは制作時間、作品の上映時間などを鑑みても、“テレビアニメ(OVA)でありながら映画”という異なる上映形態のいいとこ取りをした、最も贅沢な形ではないだろうか。

 ポスターなどのメインビジュアルを見ると、可愛らしい女子高生が並ぶ姿が印象に残るが、内容を見ると、硬派な戦車戦が描かれている。特に3章ではジャングルを舞台にした戦車戦が描かれ、会話や音楽も少なく戦いを盛り上げている。

 ミリタリーファン以外には難しい内容に思われるかもしれないが、シリーズを見続けていると、実在する各車両の特徴に沿って行動しており、役割が異なることに気がつく。まるでロボットアニメにおけるロボットのように、1機ずつに個性を感じさせる作りとなっている。言葉を変えれば戦車がキャラクターとして機能し、観客に強く印象づける。

 そして、より挑戦的なのは物語が人間同士のドラマではなく、あくまでも戦車戦を中心に描かれている点だろう。1話こそ物語の序章ということで戦車戦よりも人間関係や、新キャラクターの説明描写が多かったものの、2、3話に関してはドラマパートは全体の2割ほどしか無かった。

 人間ドラマを魅了するためにアクションを盛り上げる、という作りではなく、アクションだけで物語を魅力的にできる、観客を引っ張ることができるという、確かな確信があるからこそできる革新的な作りと言えるだろう。“萌え系でありながらも硬派”な部分だ。

 最終章のエンドロールを見て驚くのが、キャラクター数の多さだ。多くの声優がいくつもの役を兼ねているが、80人以上のキャラクターの名前が表記されている。「少女A」などの、いわゆるモブがいないのも特徴的であり、その全てのキャラクターを覚えるのは、ファンと言えども難しい。この辺りは『SHIROBAKO』のように、多くのキャラクターが登場する群像劇を、うまくまとめあげた実績がある水島努監督の本領発揮といったところではないだろうか。

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