『どうする家康』松本潤の感情を抑え込んだ芝居に滲む家康の覚悟 音尾琢真の見事な最期も

『どうする家康』音尾琢真の見事な最期

 各国大名に応援を働きかけている最中、家康は元忠の死を知る。「彦殿の敵を討ちましょうぞ!」と声をあげる渡辺守綱(木村昴)に、家康は「落ち着け、守綱!」「落ち着くんじゃ」と言い聞かせた。

「この戦は、わしと三成、どちらがより多くを味方につけるかで決まる……。腕が折れるまで書くぞ……。彦のためにもな」

 元忠の死に、家康は涙を見せない。しかしそれは、幾多もの戦いを生き抜き、今まさに戦なき世を目前とした戦いに挑む家康が成長した証でもある。強くなければ、生き残れない。強くなければ、愛する者たちを守れない。家康は書状を送り、戦う前から勝つ道筋を作り出そうとしている。もちろん三成も各国大名に書状を送っている。けれど、内容の詳細は語られなくとも、人の心を読むことにはたけていない三成の書状と違い、前田利長(早川剛史)や小早川秀秋(嘉島陸)の反応から、家康の書状には人の心を打つ言葉が書き記されていることは確かだろう。

 物語序盤で描かれた「小山評定」での、豊臣臣下に訴えかける姿や士気をあげる様にも心を引きこまれた。家康を演じている松本の目つきが回を重ねるごとに鋭く、その佇まいが重厚なものになっていることにハッとさせられる。家康は「戦上手といえば家康」と言われるほどに強く、時には老獪にも映る武将となった。書状に向かう家康の堪えるような面持ちから、元忠を失い、深い悲しみに暮れる家康の心中が察されるが、家康は感情を抑えこみ、冷静沈着に事を進めていく。

 物語の終わり、決戦の地「関ヶ原」に誘い込まんとする三成の策を見抜いた家康は「その手に乗ってみるかのう」と呟く。異様なほどに落ち着いたその声色に、思わず畏怖の念を抱いた。かつて誰もが織田信長(岡田准一)を畏れていた。今、家康はその位置にいる。

 天下分け目の大戦がいよいよ始まる。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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