『どうする家康』松本潤がついに“白兎”から“狸”へ　“か弱きプリンス”からの変遷をたどる

　酒井忠次（大森南朋）は「戦嫌いな殿だからこそ、天下をお取りなさい」という言葉を家康に遺した。酒井忠次同様、子どもの頃から家康を見守り、時に厳しい言葉で忠告してくれた石川数正（松重豊）は「殿を天下人にすることこそ我が夢」と語っていた。

　人生の重要な場面で耳を傾けるべき大切な人から思いを託されてきた家康。しかも、その言葉はそれぞれに「次の天下人はお前だぞ」というお告げのような役割を持っている。暗示にかかっているような状態といえるかもしれない。

　ピンチのときにも家康には、つねに心強い家臣団が側にいた。武田信玄（阿部寛）率いる武田軍に大敗を喫した三方ヶ原の戦いで自分の身代わりになって金荼美具足を身に付け、敵兵に向かって走った夏目吉信（甲本雅裕）は幼い頃から「きっと大丈夫」と励ましてくれていた。そんな優しく、忠義に厚い家臣が「殿が死ななければ、徳川は滅びませぬ。殿は……きっと大丈夫」と微笑んだ笑顔と最期の言葉を忘れられるはずがない。

　自分の判断力のなさで失った命の重さを受け止め、託された思いを背負いながら生きるのは、どれほどの覚悟が必要だろうか。回を重ねるごとに家康を演じる松本潤の表情に深みと凄みが増し、すでに天下人の風格さえ感じられる。天下人になるべく変化を遂げてきた家康だが、石田三成（中村七之助）との関係がどう描かれるのか、天下統一に向けての動きに注目したい。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00～放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00～放送
主演：松本潤
脚本：古沢良太
制作統括：磯智明
演出統括：加藤拓
音楽：稲本響
写真提供＝NHK