『ブギウギ』スズ子は歴代朝ドラの中でも稀有な主人公に 趣里が体現する“持ってなさ”

『ブギウギ』スズ子も稀有な主人公

 ところが涙の団結シーンの直後、梅丸社長の大熊(升毅)が「賃金削減・人員削減」の決定を下したことが明らかになる。礼子は在籍する団員の権利を求め、辞めさせられた団員・楽団員を呼び戻すために会社に訴える。しかし話し合いは決裂。礼子は会社と差し違える覚悟で、ストライキすることを決める。

 礼子についてストライキに加わるかどうか迷っていたスズ子だったが、団員を捨て駒のように扱う大熊社長の発言に怒って奮起し、自分の思いをぶつける。

「ストライキなんかしとうない。そんなん誰もしたないです。せやけど……嫌なこと、嫌や言わんと、ちゃんと言える人間にならんと、いかん気がしますねん」

 子どものときの、タイ子に「もうやめてほしい」と言われ拒絶されたこと、そして母・ツヤ(水川あさみ)の「せやけどタイ子ちゃんは偉いなあ。嫌なことは『嫌やからやめて』って言えるんは、お母ちゃんすごいなと思うわ。スズ子にもそうなってほしい」という言葉が、スズ子の中に生きている。

 人生には、どうにもならないことがある。礼子のように才能がある人でさえも、時代の荒波に逆らえないことがある。そしてこの8年後には、戦争も始まる。

 歌劇、そしてエンターテインメントは、夢の世界だ。けれども、そこに従事する人たちも生きていかなければならない。食べていかなくてはならない。その2つの事実のはざまで、スズ子はきっとこの先も苦い思いをするだろう。それでも前に進む。人生は続いていくのだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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