『大奥』鈴木杏&村雨辰剛の切なく美しい去り際 2人の魂を救済した「ありがとう」
そして、彼らの思いを引き継いで波乱の後半戦に身を投じるのが黒木(玉置玲央)だ。黒木が雨の中、青沼や源内を思いながら「懸命に歩んできた者に、この仕打ちか! あまりにも理不尽ではないか!」と悲痛な叫びを上げる場面は本作屈指の名シーンである。
そのカットバックで映し出されるのが、一橋治済(仲間由紀恵)と定信の会合。治済は家治のお匙や武女と通じており、今話で描かれた悲劇に次ぐ悲劇を生み出した張本人だ。満を持して老中職に就いた定信が凍りつくほど、真意の見えぬ治済の微笑みが恐ろしい。けれど、彼女は知らないだろう。消えたように見える青い炎の火種は、青沼から治済の息子である家斉(中村蒼)へと移植されたことを。
家光以来の男の将軍として就任した彼は今はまだ母の言いなりで、その目には正気を宿していない。だが、一度は絶えた人痘接種を復活させてくれることを祈ろう。御鈴廊下の入り口に立った家斉のバックでは、主題歌「白色蜉蝣」(Aimer)の〈百年先 紡いだ世界で光に消されて僕が見えなくても 暗闇の中で輝いた希望は絶え間なく胸を動かすから〉という青沼たちの願いとも言えるフレーズが流れていた。
■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社