『どうする家康』ムロツヨシの秀吉は大河史に刻まれた 狂気と孤独の演技を振り返る
「わしはあほうになった……。皆そう思っとるらしい。狐に取りつかれとる。このわしが小娘相手に思慮を失うと思うか?」と家康相手に茶々の話をする秀吉。「恐れながら、茶々様は遠ざけるべきと存じまする」と家康はいたって冷静に忠告する。
このやりとりの直前に秀吉は実母・仲(高畑淳子)を亡くし、その母が秀吉の野心の暴走を心配し、嫁の寧々に謝りながら息を引き取っていたこと。その母の代わりに嫁である寧々は「たかが百姓の小せがれが身の程をわきまえなされ!」と秀吉に言い放った。母は秀吉のことを「あれ」と呼ぶ。「あれにな~んも与えてやれんかったでよ。本当は何が欲しかったんだか自分でも分からんようになっとるんだわ」と母は寧々に話した。
秀吉は家康に「おめえさんは、ええのう……。ずっと羨ましかった。生まれたときから、おめえさんを慕う家臣が周りには大勢おって、わしにはだ~れもおらんかった」と低い声でぽつりとつぶやく。「わしを見捨てるなよ」という言葉も添えて、これこそが秀吉の心の声なのかもしれない。底知れぬ怖さと強烈な野心と孤独な闇を抱えて、道化のように振る舞いながらしたたかに戦国の世で才能を開花させた男。
欲しいもの何でも知恵を絞って手に入れてきた男、秀吉が跡継ぎとなる息子が生まれた途端、息子中心にしか物事を考えられず、息子のことだけを心配しながら死んでいくことになるとは……ある意味、何かの呪いのようにも受け取ることができる。
10月15日放送の第39回タイトルが「太閤、くたばる」というのも衝撃だが、肝心な物語の内容はさらに波乱含みのものになると予想される。予告で流れる秀吉に対する茶々の反撃(?)の言葉も気になる。
美しい茶々に翻弄された秀吉のように、ムロツヨシは10月13日にスタートしたドラマ『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)でパラリーガルとして新人弁護士の天野杏(平手友梨奈)とバディを組むことになった蔵前勉を演じている。若くて、強くて、魅力的な女性を相手に苦境に立たされたり、頑張ったり、思わぬ表情を見せてくれるムロツヨシの柔軟性と適応力を引き続き楽しめそうだ。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK