『THE MYSTERY DAY』は“あるある”が楽しい考察ドラマに 小栗旬の言葉に込められた意味

日テレ開局70年特番、小栗旬の言葉の意味

 もはや考察作品の常連で油断も隙もないキャラクターを演じることが多い、迫田孝也扮する夏目の秘書・結城勉に借金があることが途中でわかったり、何だかそのアンニュイな表情がこちらに様々な想像の余地を与えてくれてしまう木村多江が演じる、夏目が通う花屋の店主・宮原梓が実は警察側の人間と接点があったりと、ミスリードを誘うような意味深なシーンも上手く差し込まれていく。

 事件の真相を追うことになる、IQは超高いものの臆病者の刑事・“つくもちゃん”こと戸隠九十九(ユースケ・サンタマリア)と、刑事を目指す交番勤務の警察官・安藤花恵(川栄李奈)のバディ感も新鮮だ。戸隠が極度の臆病者になってしまったトラウマにこそ梓が関わっていることが明かされ、それゆえに彼と同期の警視庁捜査一課長・小磯一高(髙嶋政伸)が梓と会っていたり。小磯の息子が、一連の事件を興味深そうに観察していたニートの祐司(宮世琉弥)で、そんな彼の知見が事件解決に繋がったり。限られた時間内でこれだけ多くの登場人物を抱えながらも意外な繋がりや人間模様が次々に判明し、モヤモヤを残すことなく“ミステリーあるある”もちりばめられながら鮮やかに展開していくので、間延びすることなく観られた。

 ネットに蔓延る見るに耐えない勝手な憶測や誹謗中傷、根も葉もない噂や個人情報特定などの犠牲になり、理不尽に愛する人を奪われたタクシー運転手・溝口弥太郎(笑福亭鶴瓶)と、その婚約者だったサイバー課エース・奥野昇平(町田啓太)の無念さには胸が痛む。そして自分自身もどこかで悪気なく、その一端を担ってしまっていないか、好奇心や明確な悪意ではなく過度な正義感の名の下に、その矛先を誤って誰かに向けてしまっていないか立ち止まるきっかけを与えられた。

 暴露系インフルエンサー・ギャロ(笠原秀幸)のようなアイコニックな存在だけでなく、そこに群がり気軽にいいねを押したり拡散することが、“ネットの無責任な噂をどこまでも巨大化する怪物”たらしめる養分になってしまっていることに、今一度自覚的でありたいと思う。溝口が復讐の途中、自分も結局娘を苦しめた誹謗中傷を巻き起こす原因を意図せず作ってしまっていることに思い至るシーンが印象的だった。

 「人の痛みを想像」し、ネットやSNS空間を“人の命を奪う怪物にするか、人を救う灯火にするか”は、我々一人ひとりにかかっている。これまで反論することもできず悔しい思いを無視され踏みにじられてきた人の、声なき声を届ける夏目の言葉を、今一度胸に刻みたい。

■配信情報
日本テレビ開局70年特別番組『THE MYSTERY DAY』
『THE MYSTERY DAY〜有名人連続失踪事件の謎を追え〜』
TVer、Huluにて配信中
チーフプロデューサー:矢野尚子
企画・プロデューサー:宮崎慶洋
企画・演出:吉川真一朗、有田駿介

<ドラマ>
出演:ユースケ・サンタマリア、川栄李奈、町田啓太、松本まりか、迫田孝也、宮世琉弥、佐藤寛太、鈴之助、片岡礼子、笠原秀幸、阿部亮平、阪田マサノブ、峯村リエ、木村多江、中条あやみ、佐藤栞里、武田真一、劇団ひとり、原田泰造、髙嶋政伸、笑福亭鶴瓶、小栗旬
脚本:清水友佳子
演出:佐久間紀佳
音楽:林ゆうき、橘麻美
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ

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