『ブギウギ』はいい意味で“大阪らしく”ない? 心地よい“流れ”を生む脚本・足立紳の手腕

『ブギウギ』“流れ”を生む足立紳の手腕

 朝ドラことNHK連続テレビ小説『ブギウギ』は朝ドラ第109作目。今回は“ブギの女王”と呼ばれた歌手・笠置シヅ子をモデルにした花田鈴子=福来スズ子(趣里)が主人公。第1話冒頭、スズ子がパンチのある「東京ブギウギ」を歌い踊って、そのあと主題歌「ハッピー☆ブギ」が流れて、これもまたパンチがあった。ブギウギというジャンルはダンスミュージックなので、ノリがよく、聞くと朝から元気になれそうだ。

 スズ子はやがて、ブギを歌わせたらナンバーワンのスター歌手として戦後日本を盛り上げていくことになる。だが、彼女の少女時代(澤井梨丘)にはまだブギは日本に浸透していない。時代は、大正が終わって昭和になったばかりの頃。福来スズ子になる前、本名の花田鈴子は歌と踊りが大好きだが、得意の歌は「恋はやさし野辺の花よ」というゆったりした曲で、習っている踊りは日本舞踊。そんな彼女がいつしか洋楽、8ビートのダンスミュージックへと向かっていくまでにはどんな物語があるのだろう。

 やや、勇み足で想像すると、大正から昭和になると戦争が起こり、そして日本は負ける。戦後復興で立ち上がっていく日本人にはブギのようなパンチのある力強い曲が必要だったのではないだろうか。

 第1週「ワテ、歌うで!」は空前のブギブームの前時代。第一次世界大戦で日本は景気が良かった頃で、西洋文化を取り入れ和洋折衷の文化が流行り、「恋はやさし野辺の花よ」の歌のような優雅で華やかな雰囲気。いつか敗戦国になってしょんぼりするなんて思っていなかっただろう。

 「恋はやさし野辺の花よ」はオーストリアのオペレッタ『ボッカチオ』の劇中歌から生まれた曲で、大正時代に流行った浅草オペラで『ボッカチオ』が上演されたことが日本で人気になったきっかけだとか。ドナウ川、いや淀川の流れのようなこの曲のように、物語は進む。ワンシーン、ワンシーンの連なりは音楽を聞いているようで、心地よい。流れの良さは、脚本家の足立紳が映画監督でもあるからではないだろうか。

 舞台は大阪の下町なので、時々、ノリや威勢のいい人々のやりとりが挿入されるが、基調がそれではないので、喜劇調といっても大阪のコッテコテの感じともまた違う。

 例えば、鈴子が学校で「起立、礼」の号令をかけたとき、生徒が一斉に机に頭をぶつけるとか、弟の六郎(又野暁仁)が、鈴子と同級生の喧嘩を止めようとしていきなりずっこけるとか、鈴子が歌劇団の受験日を一日間違えているとかいう局面において、いわゆる関西喜劇のような派手でわちゃわちゃした見せ方をしないで、わりとさらりとやっている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる