『ブギウギ』はいい意味で“大阪らしく”ない? 心地よい“流れ”を生む脚本・足立紳の手腕

『ブギウギ』“流れ”を生む足立紳の手腕

 物語も、綿密に構築されているがさらりと見せる。最初に実家の風呂屋はな湯に鈴子の学校と登場人物を大勢出し、いつもただ風呂に預かっているアホのおっちゃん(岡部たかし)、芸者で妾の子・タイ子(清水胡桃)、記憶のないゴンベエ(宇野祥平)と様々な事情のある人たちがいて。けれど、それは別段、特別な事情ではなく、誰もが互いにさらりと受け止めて接している。鈴子の父母・梅吉(柳葉敏郎)とツヤ(水川あさみ)もまた生粋の大阪人ではなく、香川から来た流れ者だ。大阪で銭湯をはじめるにあたって、アホのおっちゃんが最初の客になってくれたという、じつはアホのおっちゃんがまず、花田夫妻を受け入れているとも言える。

 客第1号のアホのおっちゃんをいついつまでも優遇し続ける、「義理と人情」に厚い花田夫妻。この花田家とおっちゃんの関係性には「持ちつ持たれつ」精神も感じる。義理と人情や持ちつ持たれつを大事にする生き方は、第2話や第4話でさりげに匂わせている鈴子の出生の秘密にも通じていそうだ。

 人情に厚い人たちに育まれた鈴子は、はな湯の番台でいつも常連客を前に「恋はやさし野辺の花よ」を歌い、この界隈の人気者になっている。「恋はやさし野辺の花よ」はゆったりしてはいるものの、高音で歌い上げる箇所など、高度な能力や声量が必要になる。それを見事に歌っている鈴子にはポテンシャルがあるのだろう。つまり、後にブギの女王になる素養がすでにここに見られるのだ。

 最初のうちは、風呂屋を継ごうと思っていた鈴子だが、あれよあれよという間に、歌と踊りの仕事をしたいと願うようになり、花咲歌劇団を受験し、落ち、今度は、梅丸少女歌劇団(USK)を受験する。これが運命の分かれ道。花咲に入っていたら、ブギの女王は誕生しなかったかもしれない。

 第1週は、鈴子や周辺の人たちの謎を匂わせながら、鈴子が歌と踊りのエンターテインメントの世界に入っていくところまでを、趣里にそっくりな子役・澤井梨丘の奮闘で見せた。ほんとうにそっくりでびっくりした。初連続ドラマということで、テレビカメラを意識しないでひたむきに全力で演じている感じが、足立脚本と相性がいいようだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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