『名探偵ポアロ』日本人ヘアメイクデザイナーにインタビュー ケネス・ブラナーとの秘話も

『名探偵ポアロ』日本人スタッフに聞く

仕事をする上でのポリシーは「初心を大事に」

ーーケネス・ブラナーとは『シンデレラ』からのお付き合いだそうですが、吉原さんから見たケネス・ブラナーはどういう方ですか?

吉原:ケネスさんはとってもクールな方です。常に冷静で、撮影では無駄な時間を作らないほどに集中する。監督だけでなく役者でもあるので、現場の俳優たちの気持ちもよく理解されている。レオポルド役のジュード(・ヒル)くんのエモーショナルなシーンを撮ったときも、彼にものすごく配慮をした上で、うまく誘導されていました。そういう細かい気遣いが本当に素晴らしいなと。ケネスさんとはこの10年間の間に何度も一緒に仕事をしていますが、映画のプロフェッショナルとしても、人間的な部分も、毎回学ぶことがたくさんあり、とても楽しい現場です。

ーー10年間も関係性が続いているということは、ケネス・ブラナーも吉原さんの仕事をリスペクトしているということですよね。

吉原:毎回呼んでいただけるのはすごく嬉しいことですね。だからヘマをしないように、緊張感を持って仕事をしています(笑)。本当に優しい方ですが、そういう緊張感が完全に抜けきれないところをキープさせているところも素晴らしいと思います。ほかの一緒に仕事をしている人たちに対してもそうで、長い間仕事を一緒にやっている相手でも、なあなあにはならずに、ある程度緊張感を持って撮影に臨むというところが、彼の素晴らしいところだと思います。一方で、すごくチャーミングなところもあるんですよ。

ーーどういうところですか?

吉原:ポアロにはとても大きな口ひげとあごひげがあるので、ケネスさんに貼り付けているんですが、笑ってしまうとどうしても顔がひきつって取れてしまうんですよね。なので笑うときは口を開けずにフフフという感じで笑うんです。なので私がたまに笑わせようとしてギャグを言ったりすると、口を小さく開けて「若菜、本当に笑わせないでくれ(笑)」と笑いを堪えていて。そういうところは本当にチャーミングですね。

ーー吉原さんは25年以上、海外でヘアメイクデザイナーの仕事を続けられていますが、仕事をする上でのモチベーションやポリシーがあれば教えてください。

吉原:私は仕事をする上で、縦と横のつながり、人間としてのつながりが大事だと思っていて。もちろん上の世代に対してのリスペクトは持ちつつも、仕事をする上ではそういう上下関係は抜きにして、誰に対しても尊敬の念を持って接していきたいと思っているんです。年齢関係なく、誰からも学ぶことはできますし、いいところは吸収できるものなので。これまでさまざまな作品に参加してきましたが、本当に毎回学ぶことがあるんですよね。それが私はものすごく楽しくて。毎回台本をいただいたときは、子供がおもちゃをもらったときのように、ワクワクしながら読んでしまうほどで。そういう初心を大事にすることが、一番重要なのかもしれません。

ーーちなみに日本の作品に参加されたことはあるんですか?

吉原:Netflix映画『アースクエイクバード』に参加したときは日本でも撮影を行いましたが、がっつり日本の作品に参加したことはないんですよ。実は日本の作品もやってみたいと思っているんですよね。ぜひ宣伝しておいてください(笑)。

ーーわかりました(笑)。しっかり書いておきます!

吉原:ぜひお願いします!

■公開情報
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』
全国公開中
監督:ケネス・ブラナー
脚本:マイケル・グリーン
製作:ケネス・ブラナー、リドリー・スコットほか
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
出演:ケネス・ブラナー、ミシェル・ヨー、ティナ・フェイ、ジェイミー・ドーナンほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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