『転職の魔王様』は夢と現実の距離を測る 成田凌と小芝風花が見つけた“笑顔になれる仕事”

『転職の魔王様』は夢と現実の距離を測る

 『転職の魔王様』(カンテレ・フジテレビ系)最終話では、魔王様の転職が取り上げられた。

 来栖(成田凌)の前に現れたのは、商社時代の同僚・児玉(小関裕太)。海外でエネルギー開発を手がける商社に転職した児玉は、来栖をスカウトしにやってきた。一度は諦めた夢をふたたび追うチャンスを前にして、来栖の心は揺れる。

 最終話は、夢と現実の間の距離がテーマとなった。来栖が担当した求職者は、3年前にも担当した滝藤航平(駿河太郎)。37歳で広告プランナー志望の滝藤は、「私の背中を押していただけないでしょうか。もう一度夢を追いたいんです」と訴えた。

 より良い条件、より良い職場を望む人にとって、転職は夢をかなえるプロセスと言い換えられる。今ある現実から飛び出して、思い描いた未来へと手を伸ばす。けれど、そこには競争があって、夢がかなわない人もいる。それでも、傷が癒えれば、新たな可能性を見出して意欲を取り戻し、ふたたび夢に向かって飛び立つ。しかし、いつかはその夢とも折り合いをつけなければならない。夢がかなわなかったという事実を受け入れ、今ある現実の中に生きる場所を見つけるべきだ。そうしないと、いつまでも夢追い人のまま、漂流し続けることになる。

 夢を実現しようとする求職者にキャリアアドバイザーができることは、まずは背中を押すことだが、夢と現実の間の適切な位置に線を引くことも大切な仕事である。諦めの悪いクライアントに現実を受け入れさせることは、とてもハードルが高い。納得感のある着地ができず、複雑骨折したまま(※たとえです)くすぶり続けて、滝藤のように再燃することもある。同期の来訪に不意をつかれた来栖もわだかまりを抱えていたことになる。

 そういうわけで、幾度かの挫折を経験した筆者から見ても、来栖と滝藤という夢の残骸を背負った2人に、本作がどんな決着をつけるかは興味があった。結論から言うと、彼らはともに自身の生き方を見つめて、大切なものがあることに気付くのだが、その指針になったのが「笑顔になれる仕事」だった。

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