成田凌×小芝風花コンビは“自然体”で撮影　『転職の魔王様』プロデューサーに聞く制作秘話

ドラマを作る上で「自分の中で感じる部分がないことはできない」

ーーキャリアアドバイザーは何をやっているか知られていない面もあり、今作はその裏側も含めて紹介されていると思います。萩原さんはキャリアアドバイザーという仕事をどのように考えていらっしゃいますか？

萩原：事前にキャリアアドバイザーの方に取材をさせていただきました。その時に「成功率なんて10％もないんです」という話を聞いて、その時点で、来栖が転職をほぼ100％成功させるのはファンタジーに近いんだなと。キャリアアドバイザーの方からは、「だからこそ自分たちがいて、しっかり本人の話を聞いて成功させないといけない」と責任感を伺うこともできて、人間が好きじゃないとできない、相手のことを思う気持ちを持つ大変な仕事だと思います。キャリアアドバイザーの宣伝ドラマではないですが、やりがいの素晴らしさが伝わればと思います。

ーー企業と求職者の板挟みになりながら、あれだけのことを言える来栖はすごいですね。現職のキャリアアドバイザーも勇気づけられるんじゃないかと思います。

萩原：それを言いきれるだけの責任感と裏付けがあって、やっているのが来栖のカッコいいところだと思います。キャリアアドバイザーの方に事前監修をしていただいた時には、「こんなことを言える人はいません」と来栖のキャラクターに驚いていましたけど、「それができるのは良いことだ」とおっしゃっていたので、実際にいたら素敵な主人公なんだろうと思います。

ーー波乱も巻き起こしそうですが、いたらおもしろそうですね。各話それぞれ熱の入った内容ですが、一押しのエピソードはありますか？

萩原：ゲストで出演した俳優さんは、どの回もその人物をやりきってくださってすごく素敵でした。特に反響にドキドキしながら放送を迎えたのは、第7話です。子育てを頑張っている側ではなく、あえて子育てをしている方がいる周りの人たちの苦労を取り上げました。ただそれは決して、子育てをされている方を傷付けたり、悪者にする意図はなくて、実際に起きていて、会社が環境を整える必要がある問題として提示できたらと思ってのことです。大好きな先輩が子育てで頑張って、大変なのもわかっているけど、自分も苦しいという葛藤を黒川智花さんは切実に演じてくださいました。放送後、子育て中の方が不快な思いをしなければと思ったのですが、そのような捉え方はされなかったようです。

ーーメインのお二人以外にも、山口紗弥加さんやおいでやす小田さん演じる社員がいるシェパードキャリアはとても個性的で、石田ゆり子さん演じる社長の洋子が作り上げた理想の職場ですね。ドラマ作りの現場にも通じると感じたのですが、萩原さんにとって理想の職場はどんな職場でしょうか？

萩原：シェパードキャリアは、洋子がいろんなタイミングで出会った人をスカウトして集めたので、そういった意味で、でこぼこな人たちが集合して“チーム洋子”になっていると思います。決して圧迫ではなく、みんな好きなようにやりなさいと包み込んでくれる中で、自由な職場になっていると思いますね。ドラマ作りは作品ごとにチームが結成されては解散するので、全員同じチームでやっているわけではありません。毎回初めての人が集まる機会が多いので、だからこそ礼儀をもって、それぞれのやり方を尊重し合える職場は大事だと思います。最近ではドラマの現場に映画をずっとやって来られた方が参加されることも多いですし、ついていた監督によってやり方が違うスタッフさんもいるので、毎回、撮影が始まった前半はすり合わせの期間があります。その時に「これが正しいんだ」と自分が言わないようにしたり、「お互いこういうやり方があるんだね。じゃあいいかもね」と言い合えるのが一番良いかなと思っています。

ーーこれまで様々なドラマを手がけてこられたと思います。ドラマ作りの上でプロデューサーとしてポリシーや意識していることはありますか？

萩原：自分の引き出しというか、自分の中で感じる部分がないことはできないと思います。今までやらせていただいた作品は、ジャンルはバラバラですけど、登場人物の言動や悩むポイントが、何かしら自分もそうだと思えるものをなるべく入れたいと思いますし、入れないと作れないと思います。まったく自分に共通点のない、感じるものがないものをやるのは難しいですね。実体験も含めて入れ込むように常に考えていて、逆に言えばそういうドラマのネタになることを常に体験したいと思っています。

ーーここ数年ドラマの見方が変わっていて、リアルタイムだけでなく、最近は配信で観る方も多いと思います。かつてのように気にしなくていいとはいえ、テレビ局として視聴率は重要だと思うのですが、現場にいて感じることはありますか？

萩原：様々な観る機会や方法がすごく増えた時代だと思います。先ほども申し上げたように、自分がそれを観た時に感じるポイントがしっかりあるかどうかが、観た人にとってハウツー本じゃないですけど、このドラマの台詞で勇気づけられたりとか、考えるきっかけになるといいなと思っていて。過去作を配信で観て、すごい良かったですと言われたり、放送が終わっているだいぶ前の作品でも時間差で反響を感じたりするので、それを見ると、とりあえず今だけではなく、ずっと残っても恥ずかしくないものにしなければいけないと思っています。

ーー最後に『転職の魔王様』最終話の見どころと視聴者へのメッセージがあればお願いします。

萩原：来栖と千晴が過去にどんなふうに出会っていたかがわかって、今度は来栖自身の一番の悩みである彼自身の転職という問題が起きます。求職者にいろんな言葉を投げかけてきた来栖が自分自身にどんな決断を下すか、来栖のために千晴がどう動くかというところで、二人の関係性の決着を見ることができます。これまで二人を応援してくださった方や初めての方も楽しめる回になっていますので、ぜひご覧いただければと思います。

■放送情報
『転職の魔王様』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演：成田凌、小芝風花、山口紗弥加、藤原大祐、おいでやす小田、前田公輝、井上翔太、井本彩花、石田ゆり子
原作：『転職の魔王様』『転職の魔王様2.0』額賀澪 （PHP研究所）
脚本：泉澤陽子、小峯裕之
主題歌：milet 「Living My Life」
オープニング曲：LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Monster」（rhythm zone）
音楽：横山克、橋口佳奈
プロデューサー：萩原崇、石田麻衣、櫻田惇平
監督：堀江貴大、丸谷俊平、保坂昭一
制作協力：ホリプロ
制作著作：カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト：https://www.ktv.jp/tenshokumao/
公式Twitter：@tenshokumao
公式Instagram：＠tenshokumao