町田啓太、松下洸平らが躍動 映画『ミステリと言う勿れ』のキャスティングの素晴らしさ

『ミステリと言う勿れ』のキャスティングの妙

 田村由美による大人気の同名コミックスを原作とした映画『ミステリと言う勿れ』が公開されている。2022年1月期に放送された連続ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)で取り上げられていない長編エピソード “広島編”が本作で待望の映画化となった。今回も犬堂我路(永山瑛太)は出てくるものの彼とは少し距離を置き、広島を舞台とする狩集家の遺産相続問題にまつわる“ミステリ”を久能整(菅田将暉)が解き明かす。

 ドラマ版のバスジャック事件のせいで印象派展を逃した整が、改めて作品を見ようと広島の美術館を訪れるところから物語はスタートする。整を事件へと引き込んだのは、我路の知り合いである狩集汐路(原菜乃華)だ。代々遺産をめぐって死人がでるほどの相続争いをしてきた狩集家で、高校生の汐路は遺産相続をかけた「謎解き」に挑戦しなければならなかった。そこには遺産相続候補者として汐路のいとこにあたる赤峰ゆら(柴咲コウ)、理紀之助(町田啓太)、波々壁新音(萩原利久)の姿も。汐路は整の他にも、狩集家お付きの弁護士の孫で、汐路の初恋の人でもある車坂朝晴(松下洸平)の力を借りながら、狩集家の蔵に隠された秘密を解き明かしていく。

※以下、『ミステリと言う勿れ』のネタバレを含む

 ドラマ版『ミステリと言う勿れ』の魅力として度々話題となったキャスティングの妙は映画にも引き継がれていた。菅田将暉を筆頭にキャスト陣の輝きが観客を圧倒させる力を持つ中で、朝晴を演じる松下洸平は新たな境地を見せてくれた。これまでは真っ直ぐで誠実さの光る芝居で存在感を見せていた松下が朝晴を演じたことで観客はまんまと術中にハマり、朝晴という人間に良い意味での先入観を持ってしまったのではないだろうか。その朝晴が汐路にとって「初恋の人」であることも、松下の芝居によって深みを増す。松下は、“女性慣れしているわけではないのに、人が惹きつけられてしまう魅力”を出すのが上手い俳優だ。汐路が朝晴に夢中だったからこそ起きた悲劇は、物語のキーとなる汐路の年齢も含めて本作を振り返った時に、この男がいかにむごいキャラクターであったのかを改めて思い知らされる。

 こうしたキャスティングの素晴らしさはいたるところに感じられる。いとこの中で唯一子供がいるゆら役を演じた柴咲コウは、これまでに『GOOD LUCK!!』(TBS系)の整備士や『ガリレオ』(フジテレビ系)の刑事役など仕事にやりがいを持つキャラクターを度々演じてきた。そのパブリックイメージがゆらのキャラクターをより深いものにしたのではないか。これは、作品の前半で母の顔が多いゆらが後半で仕事を続けることに意欲を見せたときに、心情を丁寧に表現する柴咲の芝居を裏打ちしてくれただろう。

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