町田啓太、松下洸平らが躍動 映画『ミステリと言う勿れ』のキャスティングの素晴らしさ
また、メガネ姿で寡黙なイメージゆえになかなか信頼を得られなさそうな理紀之助を、笑顔に優しさが滲む町田啓太が演じたということも重要だった。「隠すこと/隠さないこと」にフォーカスされる理紀之助のエピソードにおいて、理紀之助は何度か“疑惑”をかけられそうな表情を見せていた。だが実際の彼は臨床検査技師として実務面において誰よりも事件解決に手を差し伸べており、徐々に見えてくる真の人柄に町田自身の持つまじめで優しい印象は強い説得力を持たせてくれた。こうしてキャラクターの特性と役者の持ち味がかけ合わさった時に、どの登場人物もまるでこの作品で初めて観たとは思えないほどの強い個性を持って、時にミスリードを誘い、時に強い説得力で心情を訴えかけてきた。
加えて本作は、整によって気持ち良いまでに言語化された登場人物たちの心情とともに、美しいほどの伏線回収がなされていく。ゆらの子どもと新音の会話や汐路が小さい頃に描いた絵など、言葉から映像に至るまで随所にはりめぐらされた伏線が、謎解きだけでなく人の心情に寄り添う場面でもあざやかに回収されていくさまは気持ちがいい。些細なセリフや表情までもが物語の本筋に絡んでくるため気を抜くことはできず、度々得られるカタルシスにより最後までのめり込んでしまう。こうした綿密な作品作りもまた、本作の大きな魅力の一つである。
本編のほとんどは整と汐路が狩集家の事件と対峙する様子が描かれるが、エンドロール後にはドラマ版で馴染みのキャストも登場して懐かしい姿を見せてくれるので、最後まで席を立たずに見届けてほしい。
■公開情報
映画『ミステリと言う勿れ』
全国公開中
出演:菅田将暉、松下洸平、町田啓太、原菜乃華、萩原利久、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、永山瑛太、角野卓造、段田安則、柴咲コウ
原作:田村由美『ミステリと言う勿れ』(小学館『月刊フラワーズ』連載中)
監督:松山博昭
脚本:相沢友子
音楽:Ken Arai
主題歌:King Gnu「硝子窓」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:東宝
製作:フジテレビジョン、小学館、トップコート、東宝、FNS27社
©田村由美/小学館 ©フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社
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