『らんまん』万太郎は何度だって立ち上がる “この先の世に残すべき宝”を描いた意義

『らんまん』何度だって立ち上がる万太郎

 しかし、その思いも虚しく、万太郎を待っていたのは煙のくすぶる崩れた長屋だった。虎鉄(濱田龍臣)の無事を確認できたのは不幸中の幸いだったが、空の背負子に持って帰ることができる標本はほとんど残ってはいなかった。ふちの焦げた『南総里見八犬伝』、園子が描いたヒメスミレの絵を胴乱にしまう万太郎。瓦礫のそばには、小さな花がひっそりと、けれどたくましく咲いていた。

 その花の名は、ムラサキカタバミ。大震災という未曾有の被害があった東京の荒野でも咲いている生命力の強い花だ。「何があったち、必ず季節は巡る。生きて根を張っちゅう限り、花はまた咲く」と再び万太郎の目はまっすぐに、やる気を取り戻していく。原稿を自分で印刷所に持って行こうとはせずに、事前に送っておけば――という、たらればも巡るが、ムラサキカタバミのように、万太郎もしぶとく、何度だって立ち上がってきた。まだ目は死んでいない。こんなことで。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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