林遣都、富栄ドラム、迫田孝也ら、『VIVANT』を傑作たらしめた“脇役”ではない脇役たち

『VIVANT』を傑作にした“脇役”たち

 後半から登場したテントのメンバーには、キャリア十分の実力派俳優が配置された。印象的だったのは、サングラスの男・バトラカ役の林泰文だ。ノゴーン・ベキ(役所広司)に従い、テントを支える重鎮である。林は子役の頃から数えると俳優歴45年以上という大ベテランで、大林宣彦監督作品の『漂流教室』、『青春デンデケデケデケ』などで主演を務めてきた。堺雅人、二宮和也、役所広司の脇にいて、落ち着いて話を進めたり、説明役を務めたりするのだから、彼ぐらいのベテランじゃないと務まらないのだ。狙撃の名手・ピヨ役の吉原光夫は、劇団四季などでキャリアを積んできた俳優。ミュージカル『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンは5回も演じている。最近では『ガンニバル』(ディズニープラス)の大男・岩男役のインパクトが強かった。

 最終回で悪役を一手に引き受けたバルカの外務大臣・ワニズを演じたのは、なんと今回がドラマ初出演となる舞台俳優の河内大和。シェークスピア劇を追求し、NODA・MAP『THE BEE』では長澤まさみ、阿部サダヲ、川平慈英とともにメインキャストを務めた。「世界一公正」なはずの公安部なのに公正じゃない判断をした元公安部外事課課長で内閣官房副長官の上原を演じたのは、大ベテランの橋爪功。大物でもあり、小物でもある上原を短時間で巧みに演じてみせた。

 何より目を惹いたのが、ノゴーン・ベキの若い頃を演じた林遣都の熱演だ。公安の諜報員としてバルカに派遣されるが、愛する妻を殺され、我が子をさらわれてしまうという苦難に満ちた役柄を情熱的に演じてみせた。主演級揃い、重鎮揃い、曲者揃いのオールスターキャストだった『VIVANT』だが、第9話は間違いなく彼が主役だったと言っていいだろう。

 ドラマは主演だけでは成り立たない。破格のスケールとなった『VIVANT』のようなドラマはなおさらだ。魅力的な脇役、何かと疑ってしまう脇役、主演を食ってしまうような脇役を全編にわたってぬかりなく配置し、彼らが熱演で応えたことによって、『VIVANT』は成功作となったのだ。

■配信情報
日曜劇場『VIVANT』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS

■リリース情報
『VIVANT』
12月27日(水)Blu-ray&DVD-BOX発売
製作著作・発売元:TBS
発売協力:TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント

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