『VIVANT』物語のラストを考察 回収されていない伏線と乃木の“家族愛”の終着点とは

『VIVANT』物語のラストを考察

 夏ドラマ最大の話題作となったTBS日曜劇場『VIVANT』が、ついに最終回を迎える。そこで、未だ明かされていない謎や、物語はいったいどこに着地するのかを考察する。

第9話で明かされたテントの実態

 第9話でテントの実態が明かされた。テロで稼いだ資金は孤児院を経営するなどして孤児の救済に使っているが、真の目的はノコル(二宮和也)が代表を務める資源開発会社・ムルーデルによる、半導体に欠かせない原料であるフローライトの地下資源が眠る土地の買収だった。

VIVANT

 テントの創設者ノゴーン・ベキ(役所広司)は、乃木憂助(堺雅人)の父親・乃木卓(林遣都)だ。40年前、乃木卓は農業使節団と偽り武装勢力を調査する公安の任務でバルカに渡り、砂漠を緑地化していく。そんな中で内乱に巻き込まれ、公安に見捨てられ武装勢力に捕えられてしまった。そして子供とは生き別れ、妻・明美(高梨臨)は憂助を探してほしいこと、こんな目に遭わせた奴に復讐してほしいことを言い残して息を引き取った。

 絶望の中にあった乃木卓はバトラカ(林泰文)に助けられ、兄を失った孤児のノコルと出会った。ノコルを育てることで生きる希望を見出し、さらに武装勢力から村を守る用心棒を請け負ったことで、現在のテントの組織に至る。「最終標的は日本」という噂について、ベキは「昔は公安に裏切られて憎んでいた。その話が大きくなったんだろう。私が祖国を狙うわけがない」と、日本へのテロの依頼も断ってきた。この言葉を信じるなら、別班がベキを追う必要はなくなる。しかし、妻の遺言は決して忘れることはないはず。

最終回の鍵は「なぜ乃木卓を公安が見捨てたのか」

 しかし、なぜ乃木卓を公安が見捨てたのか。日本の諜報員が潜伏したことがバレたと思い見捨てたか、資源が眠る土地で、緑地化を遂行していくベキがバルカにとって邪魔となり、バルカ政府の圧力で助けることができなかったのか。この真相が最終回の鍵だろう。

 もし本当に「最終標的は日本」がデマだとしたら、それはテントを潰したい人物の情報操作だったということになる。その人物として考えられるのが、警視庁公安部部長の佐野(坂東彌十郎)だ。乃木卓が元公安の捜査官との認識があることから、乃木卓を見捨てた人物の1人の可能性がある。それならば、ベキの存在を脅威に感じるのとともに後ろめたさもあるはず。佐野がベキの復讐対象の人物ならば、『半沢直樹』(TBS系)制作チームらしく、最後はベキが佐野に土下座をさせて復讐が完了する展開か。

 また、ベキが別班の指揮官の櫻井(キムラ緑子)と繋がっていても不思議ではない。ベキを単純に消したいのなら、国際的なテロ組織なので全世界に発信すればいいところだが、やはり日本も地下資源の恩恵を独占したい思惑があり、内々で解決しようしている。そうなると、駐バルカ共和国日本大使(檀れい)や、エネルギー開発を行う丸菱商事の長野専務(小日向文世)も関わってくるはずだ。

伏線が回収されていない長野の思惑は?

 その長野についても、未だ伏線が回収されていない人物だ。帰国した乃木から自爆テロを起こしたザイール(Erkhembayar Ganbold)の話をした時に異様に食いつき、「『F』も怪しい」と言っていたにもかかわらず、その後何もない。公安に問い詰められた防衛大学校卒業から一橋大学大学院入学までの空白2年間が、別班の訓練を受けていたと誰もが予想するはず。乃木を部下として配置し、あれだけの問題を起こしても部署異動させず海外への出張を許しているのも別班と知っているからだろう。

 不倫相手が凄腕ハッカーのブルーウォーカーこと太田(飯沼愛)なのは、ただのパパ活ではなく、ハッカーとしての才能を利用して監視するためだったのではないか。ただ、別班はあくまで昔の話であって、映画『アウトレイジ』の刑事役のように、2つの組織をけしかけ、潰し合わせている中で、丸菱商事が資源の権利を独り占めしようという考えの持ち主なら小日向らしい役だ。

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