『VIVANT』物語のラストを考察 回収されていない伏線と乃木の“家族愛”の終着点とは

『VIVANT』物語のラストを考察

病院の映像を送ったのは誰か?

 第9話でフローライトの地下資源の存在がバルカ政府に漏れ、乃木の情報漏洩が疑われた。これについては共同出資者であるノコルの親友でベレール興産のゴビ(馬場徹)の裏切りが濃厚なのではないか。彼は政府と繋がりがあり、情報を知った政府と結託した可能性が高い。

 そして、第9話の最後では、乃木が別班を裏切って撃ち殺したはずの4人が病院で生きている映像が日本のテントモニターから送られて来たことで、乃木の行動はテントに潜入するためのスパイ行為だったことが決定的となる。乃木も「別班の任務で来ている」と白状し、ベキが刀を振りかざした所で放送が終わった。

 さて、誰が映像を送ったのか。顔を知っているのは、野崎、チンギス(Barslkhagva Batbold)、ドラム(富栄ドラム)、別班を送り込んだ櫻井の4人。以前からテント説があったドラムだが、第9話で乃木が言うまで、ノコルと兄弟のように育てられたアディエル(Tsaschikher Khatanzorig)の娘・ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)の安否を知らなかった。もしテント側の人物なら速攻で報告していたはずだ。これは野崎もそうだし、根強いテント説があった柚木薫(二階堂ふみ)も可能性は消えた。ただ柚木については、アディエルと深い繋がりがあり、ベキやノコルを知っていても不思議ではない。帰国後の乃木に対する一連のベタすぎる恋愛行動もハニートラップの可能性は未だ拭えず。別組織のスパイ説もあるが、強いて言うならテントの孤児院育ちか。

 櫻井に関しては、別班の司令官がテントなのは考えにくく、もし画像を送ったのなら、乃木の考えを全て織り込んだ作戦の一つだろう。他の別班員から反対されても今回の作戦に乃木を参加させたのは親子の対面をさせたいからで、櫻井は母方の親族だったりするのだろうか。しかし、乃木の強気な別人格の「F」があれだけ乃木に「別班だと言うな」と止めたていたのは、ベキが公安に見捨てられたように、乃木も切り捨てられたからなのか。ただ結果として、乃木が仲間を裏切る人物ではなかったことが分かり、裏切りを一番嫌うベキが乃木を認める流れになると推測できる。もしかしたら、野崎が第1話のように助けに来る可能性もある。

乃木の「家族愛を取り戻す」物語の結末が最終回の見せ場に

 この物語は、乃木が「家族愛とは何か」を知り、家族愛を取り戻すことが一番のテーマだ。乃木は家族愛を知らずに育ち、自衛隊に入隊し別班となったのも“家族を愛する”という感情を理解するために、日本を家族と思い、日本のために戦うことを決意し、家族愛不足を愛国心で埋めていた。

 また、「F」という乃木のもう一つの強気な人格は、養護施設時代の孤独から生まれたもの。そんな乃木が、薫という愛する人ができて、父親と再会し、義理の弟までできて、自分が作る赤飯を喜んで食べてくれる家族愛を知ることができた。つまり彼が別班にいる意味がなくなり、よって「F」の存在も必要なくなる。これが乃木の物語のエンディングだと思われるが、この家族愛が本物か、それとも愛国心が勝つのか、それが最終回の山場になるはずだ。

 そしておそらく乃木は、愛する薫の元に戻ってくるだろう。ジャミーンと3人でバルカに戻り、ノコルと共に孤児院の手伝いをしていくエンディングなら美しい。ベキは、テントはノコルに託し、故郷の島根に帰らせてあげたいところだが、やはりテロの罪は重く、テロ組織の罪を一身に背負い最後は命を奪われると予想する。もしくはバトラカがクーデターを起こすか。

 なぜドラムがここまで野崎を慕うかについては続編で描いていただければと思う。

 どの組織も1話で壊滅できるレベルのものではなく、このスケールの大きな作品をあと1話でどう収め、物語の着地点をどこに持ってくるのか。最終回を大いに期待したい。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる