『らんまん』神木隆之介×浜辺美波は新時代の“理想の夫婦” 妄想力/想像力の大切さも

『らんまん』が教えてくれた“妄想”の大切さ

 文京区根津から渋谷道玄坂へーー。NHK連続テレビ小説『らんまん』23週「ヤマモモ」では、明治30年、寿恵子(浜辺美波)が渋谷・道玄坂の空き家を120円で買って、待合茶屋を開業する。

 サブタイトルのヤマモモは高知の名物であり、寿恵子がはじめたお店の名前でもある。寿恵子の開業の前に、綾(佐久間由衣)と竹雄(志尊淳)も上京し、高知の名物を出す屋台をはじめ、そこでヤマモモも献立のひとつになっていた。

 第23週は、綾、竹雄、寿恵子が自分たちの夢に向かってゆく。藤丸(前原瑞樹)も綾たちと意気投合し、菌の知識を活かして酒作りに協力しようとやる気になる。わいわいとにぎやかな根津の街。それに比べて、道玄坂は、整備のされていない、吹き溜まりのような街だった。

 江戸時代の名残で、明治時代、東京になってもいまだ中心は江戸城のあった千代田区日比谷の界隈であり、そこよりも内側はまだ未開の地であった。どぶさらいもしていないため藪蚊がいる不潔そうな場所だが、寿恵子が下見にいった空き家の持ち主は、向かいの荒谷佐太郎(芹澤興人)が言うには鍋島家で奥勤めしていたしゃっきりした老婦人であったらしい。

 荒谷は、飲んだくれて家の前に寝転がっているようなやばそうな人に見えたが、見かけと違って、安全な人のようだ。どこからか落ち延びてきてほかに行くところがないようだが、祖母・カネ(梅沢昌代)は美味しい握り飯を売って生計を立てていた。

 寿恵子は万太郎(神木隆之介)に倣い、渋谷をフィールドワークして地図を作り、街の人の話を聞き、この場所に可能性を見出し、開店に踏み切る。あっという間に、古びた空き家がきれいになって、この地域の顔役的な佐藤弘(井上順)を筆頭に、地域の人を食事会に招いて関係性を切り結び、あっという間に、通(ツウ)が通う新しい店として評判を得るようになっていたのは驚いたが、残り3週間なので、ここは早送りで進めるのは仕方ないだろう。クサ長屋編も楽しかったが、渋谷編ももうちょっと長めに観たかった気もする。

らんまん第115話

 と、ここで注目したいのは、寿恵子は4人目の子供を出産したばかり。子供たちは全員まだ幼く世話がかかる。にもかかわらず、店をはじめるというたくましさである。長屋にはりん(安藤玉恵)がいるから助けてもらえる。そのうえ、万太郎が育児を手伝っていて、ひじょうに現代的な価値観で子だくさんの共働き夫婦を描いている。

 寿恵子は4人目の子を妊娠中、本当は万太郎の一番弟子として植物採集に野山を駆け回りたかったが、きっともうできないと諦めていたのだが、その代わりに、店を持ち、自分の野山を開拓したのだ。そして、そこに、万太郎は、高知の山の御神木のように、何かお守りになる木を植えるといいと提案し、やまももを植えるのである。なんて美しい物語であろうか。

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