『トリリオンゲーム』ハッタリと中身の両輪を備えた友情パワー 國村隼が見せた怪しい動き
「信じてよかった」。そう胸をなでおろしたのは、ガク(佐野勇斗)だけではなかったはず。金曜ドラマ『トリリオンゲーム』(TBS系)第7話。気づけば、ハル(目黒蓮)とガクの2人で始めた株式会社トリリオンゲームは年間収益100億円を稼ぎ、従業員数は30倍にも膨れ上がっていた。だが、ハルの目標はあくまでもトリリオンダラー(1兆ドル)。まだまだ道の途中といったところだ。
ソーシャルゲームの開発ではクリエイターたちを捨て駒呼ばわりしていたハル。その冷ややかな表情にガクも凜々も、そして私たち視聴者もゾッとしたものだ。そして、一事が万事。新たにハルが着手した「トリリオンTV」を作るために集った仲間たちのことも、もしかしたらそんなふうに考えているのではないか、と不安にもなる。だが、ガクはハルをとことん信じようと腹をくくった様子だった。「友情パワー」なんて少々照れくさいことを口にするガク。その純粋さが、どれだけ会社の規模が膨らんでも変わらないでほしいと願うばかりだ。ところが、どうやらハルの良く言えば度胸のあるところ、悪く言えばその場しのぎのハッタリをガクも習得してしまったらしい。
番組制作会社の報道プロデューサー・功刀(津田健次郎)を口説きにいったときのことだ。トリリオンTVを潰しにかかろうと動き出したドラゴンバンクは、アメリカの大手配信サービス会社を買収。CEOには桐姫(今田美桜)が就任し、地上波テレビの放送権を買い漁り始める。そんな桐姫を報じようと、その姿を追う功刀にハルは「桐姫がどこから出てくるのか当てられたら俺らと組む。外したら二度とあなたの前に現れません」と賭けを申し出るのだった。その賭けに乗った功刀。だが、ハルではなくガクに答えさせるという予想外の動きに出た。きっと以前のガクだったら「無理だよ」と狼狽えていたはず。だが、今回はすぐに落ち着いて「正面玄関」と言い切る。その根拠として、次のアポイント時間と現在の道路状況を加味して、正面玄関から最短ルートで渋滞を迂回するだろうと計算したのだと続けた。
しかし、実際は計算なんかではなく、桐姫の性格を考えてのことだった。桐姫ならコソコソと隠れたりせず、正面玄関から堂々と出てくるだろうと。ガクは同じ答えだったとしても「計算して導いた」と言うことが功刀にとっては重要だと即座に判断した。なぜなら、ハルは功刀にガクを「超天才人間コンピューターのガクです」と紹介していたから。その分析力がどれほどのものなのかを見たかったに違いない。説得力を持って情報を提示するには、相手が何を欲しているのかを把握すること。ガクはハルのそばにいることで、人心掌握術のコツを掴んでいったように見える。
一方で、ハルもまたガクの影響を受けているようだった。早々に功刀から「とんでもない二枚舌」だと見抜かれたハル。「お前が報道をやりたい、本当の目的は?」と問われると、「報道はただの釣り餌、莫大な広告料を取るためのね」と話す。ここで本音を話すところが、またハルのずるいところだ。とことん騙してくれたっていいのに。きっとハルにはそうすることだってできるはずなのに。それでも本音をさらけ出してくる。もしかしたら、これもハルのテクニックなのかもしれない。人は言いにくいことをあえて言ってくれる人に、心をさらけ出してくれたと信頼を寄せてしまうことがある。例えるなら、商品の欠陥を認めてすぐにリコールをする会社に信頼と好感度を抱くように。