『VIVANT』が提示する家族の愛憎劇 ダークサイドの役所広司と堺雅人に新味

『VIVANT』役所広司と堺雅人に新味

 8月20日に放送された『VIVANT』(TBS系)第6話は、ドラマ後半の主軸となるテーマが提示された回だった。(以下、ネタバレ含む)

 第6話は、国際テロ組織テントの会議から始まる。前話で乃木(堺雅人)とアリ(山中崇)の会話から、テントの指導者ノゴーン・ベキ(役所広司)が生き別れになった乃木の父親だと判明し、時を同じくして公安の野崎(阿部寛)もテントのマークが乃木家の家紋と同一であることを突き止めた。

 そんなテントの幹部クラスが顔をそろえた会議。決算報告で6億ドルになろうとする巨額の利益に耳をそばだてるそばから明かされたのは不正送金の使途だ。乃木が追求した丸菱商事だけでなく、各国で同様の誤送金は実行されていた。そのうちブラジルの事案では、担当した幹部のギリアム(海老原恒和)がマテウス社の社員と結託して、意図的に市場価格よりも低い金額で報告。差額をピンはねしていたことが発覚し、ノゴーン自らの手で粛清される。

 シルエットが映し出された抜刀・斬撃モーションが時代物のノスタルジーを漂わせる中で、番組冒頭の「過激な制裁シーン」の触れ込みに身構えていた視聴者に、残虐描写を早々に済ませたのは制作側の配慮かもしれない。会議のシーンからわかったのは、テントが国境を越えた犯罪集団でノゴーンの独裁に近い体制であることだ。また、二宮和也演じるノゴーンを「父」と呼ぶ人物が、組織内の規律維持に関わっていることも伝わってきた。

 ノゴーンが乃木卓(林遣都)であることは、野崎と公安部部長・佐野(坂東彌十郎)の会話を通しても明かされる。第6話は、乃木の別人格F(エフ)誕生の由来や召集された別班の特命チームも含めて、全体的に登場人物の紹介が多かった。元公安でバルカ共和国と深いかかわりのある卓は、なぜテロリストになったのか。その理由は定かではないが、ひとまず公安が乃木を追う理由として、テントとのつながりを明確にする必要があったと考えられる。

 乃木の出自を通して浮かび上がってくるのは、本作が家族の愛憎劇をはらんだ作品であることだ。乃木は留学先のアメリカで9.11を経験し、国だけでなく家族のためテロと戦う生き方を知った。父が生存していることを知って「会ってみたい。話をしてみたい」と願うが、同時にテロ組織のトップであることも理解しているので、乃木の感情は引き裂かれている。Fから「ベキに会うのはいい。その時は親父を殺す時だ」と忠告され、乃木はジレンマに直面する。

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