『らんまん』要潤が植えた志の種 田邊は植物学の世界から離れて“幸せを得る”のか
以前、田邊を演じる要潤のインタビューをした際、その取材の前には『らんまん』(NHK総合)の収録があり、「田邊彰久」としての終盤の大事な撮影が行われているというのが察せられた。
そのインタビューの中で要は、田邊と万太郎(神木隆之介)の関係性について、「万太郎と田邊は両極ですが、どちらも間違ったことはやっていないと思うんです」「そのプラスとマイナスがなかなか一致しない田邊と万太郎のキャラを楽しんでいただければと思います」と話していた。5月某日の取材当時、この「どちらも間違ったことはやっていない」という考え方は、かなり先の展開を知り、演じている要だからこそ出る言葉だなと感じていたが、本日記念すべき第100話を観て、その意味を汲み取ることができた気がする。
要潤が感じた神木隆之介の成長 『らんまん』田邊教授役は「どんどん裏切って行く方向」
物語の舞台を東京に移し、主人公・万太郎(神木隆之介)が夢に向かって突き進んでいるNHK連続テレビ小説『らんまん』。そんな万太郎に…
偶然にも同じタイミングで「キレンゲショウマ」に出会い、新種かどうかの研究に励んでいた田邊と万太郎。その決め手となる果実の標本を一手先に手に入れた田邊は、ある結論に辿り着く。それは、キレンゲショウマは世界でも稀に見る特異な植物であり、この一種のみで、一つの属を構成する、新属新種であると。学名は「キレンゲショウマ・トゥルビナータ・タナベ」。花の咲かなかったトガクシソウで涙を飲んだ田邊に、ようやく笑顔が咲き誇る。キレンゲショウマ属は、キレンゲショウマただ一種だけからなる東アジアの固有属であり、日本人が日本の雑誌に発表した最初の新属となった。それは欧米の学者に頼らず、日本人自らが自分で学名を与えて発表するという『日本植物学雑誌』での田邊の宣言を、自らが有言実行して見せたのだ。万太郎の「おめでとうございます、田邊教授」という言葉には、悔しさも滲んでいるが、今も変わらぬ尊敬と感謝の念も垣間見える。
だが、急転直下。田邊は大学から非職を命じられてしまう。事実上の帝国大学からの追放だ。その頃、徳永(田中哲司)がドイツへの留学から帰国。「フィールドワーク」といった横文字がやけに流暢だ。ドイツに旅立つ前、田邊は徳永に「留学から戻ってきたら君も教授だな」と声をかけていたが、皮肉にもその言葉は現実となってしまっている。
教授室の窓を閉め、帽子と鞄を手に取り、部屋から出ていく田邊。窓辺に残された胴乱と野冊、キレンゲショウマの標本が暗示するのは、植物学の世界から離れることだろうか。