『リバーサルオーケストラ』門脇麦&田中圭の恋模様をもう一度 “玉響”が奏でる人生の物語

『リバーサルオーケストラ』が紡ぐ人生の物語

 2023年1月期に放送された水曜ドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)のBlu-ray BOX、DVD-BOXが8月9日に発売される。本編映像だけでなく、特典映像としてメイキングや演奏シーンの特別編集版などが、封入特典としてオールカラーブックレットが封入されているとのこと。門脇麦演じる元天才ヴァイオリニスト・谷岡初音と田中圭演じる毒舌マエストロ・常葉朝陽をはじめとするオーケストラ「児玉交響楽団(通称・玉響)」の団員たちの奮闘を描いた本作は、最終話における7分に渡る演奏シーンがとりわけ圧巻だったように、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の全面協力によって成立した、登場人物たちによる演奏パートが素晴らしく、「観る」だけでなく「聴く」ドラマとしても、手元に置いて何度も楽しめそうである。

 『リバーサルオーケストラ』の魅力は、俳優たちの「躍動」にある。玉響は、通常の練習場所やコンサート会場だけでなく、時に酒蔵、時に学校、時に介護施設と、一つ所に留まらず、常に移動し続ける「街の交響楽団」でもあった。そこでそれぞれの人生の物語を奏でる登場人物たちの個々の魅力は、俳優陣の素晴らしさ含め枚挙に暇がない。

 何より目が離せなかったのが、ドラマ全編を通して楽しそうに「追いかけっこ」をしているかのような、初音と朝陽のかわいらしくてもどかしい恋模様だ。第1話では、指揮者である朝陽が、初音を玉響のコンサートマスターにスカウトするために、「ハンター」さながら彼女を追いかけていた。続く第5話においても、朝陽は、その場から飛び出した初音を追いかける。ここでの朝陽は、寒空の中を走っていった初音に上着を着せる優しさを見せたかと思いきや、過労で倒れ、それがきっかけで初音が言うところの「鉄仮面」の思わぬ内面が明かされたりもする。2人の関係性が大きく変わっていく重要な局面でもあった。

 一方、初音が朝陽への好意を自覚して以降、特に告白してからの第9話以降の展開は、逆に初音が朝陽をなりふり構わず追いかける姿が目立った。そして極めつけの最終話。初音が、朝陽を説得するために全速力で走って彼の元に向かい、彼を見つけ「確保」と叫ぶ。まるで初回の“ハンター”朝陽の姿に呼応するかのように。その後、2人は会場に向かって共に必死で走るのである。この「ずっと追いかけっこをしていた2人がやがて一緒に走ること」を通して描かれた、不器用な2人の、一筋縄ではいかない恋の物語は、握手した手をほどかないままにするという形で、手を繋いだまま歩く2人の後ろ姿で締めくくられた。並んで歩きながら、少し先の楽しい未来の話をして、思わずウキウキしてピョンと飛び跳ねる初音の姿のかわいらしさと言ったらなくて、それだけでこれからの2人の物語をもっと観たいと思わずにはいられなかった。

 そして、その2人を演じたのが、門脇麦と田中圭だったこと。その意外性こそが本作の妙ではないだろうか。1つ前のクール(2022年10月期)では『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ系)において、恐ろしいサイコパスぶりで視聴者を震撼させていた門脇麦の、コメディエンヌとしての一面を観ることができたこと。何より本作の見どころは、ひた走る彼女の一挙手一投足のかわいらしさにあるといっても過言ではない。市役所の職員として、眼鏡姿でひょっこりと顔を出し、元天才少女だったことはおくびにも出さず、音楽なんて興味もないという素振りを見せていた彼女が、朝陽によって玉響の練習場所に引っ張り出され、その音楽に思わず魅了され、演奏せずにはいられなくなるその姿。目が輝き、笑みが自然と零れ、頑なだった心が溶けていく、その様子。彼女は常に一生懸命、人と音楽と向き合い、それゆえに人々の心を動かし、玉響自体を動かしていく。誰もが愛さずにはいられない、応援せずにはいられないヒロインを、彼女は全身で示していた。

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