吉沢亮、『キングダム』に刻んだ嬴政の覚醒の瞬間 過去と現在の“2役”で見事な演じ分け

吉沢亮、『キングダム』に刻んだ覚醒の瞬間

 紫夏はこの頃の嬴政と対照的な人物で、杏が発する力強いセリフの一つひとつには“意志”が宿っているのを感じる。物語は紫夏との悲劇的な別れの上に現在の嬴政があるのだと描いているのだが、ここで彼の持つ揺るぎない信念の根底に紫夏の“遺志”があったことを私たちは思い知る。嬴政に多大な影響を与える役どころを十全に担った杏の功績は素晴らしいが、嬴政というキャラクターの過去の像と現在の像という“2役”を演じ分け、やがてそれらをつなぎ合わせてみせる吉沢は、今作の真の主人公を演じたのだともいえるだろう。

 劇中には嬴政が“目覚める瞬間”がおさめられている。絶望する嬴政から未来を見据える嬴政へとキャラクターが切り替わる瞬間には、スクリーンを見上げながら両手の拳を握り締めずにはいられなかった。吉沢のこの妙演には、観客の身体にまで影響を及ぼす力があるのだ。

吉沢亮、『キングダム』シリーズで続ける挑戦 『東京リベンジャーズ』でも求心力を発揮

『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて、映画『キングダム2 遥かなる大地へ』が7月28日に放送される。同日に上映開始となるシリ…

 こうした鋭い演技の切り替えというと、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』でのマイキー役にもみられるものだ。私たちは誰もがつねに100パーセントの状態で生きているわけではない。悲しみ、苦しみ、喜び、怒りーーなどといった精神の状態によってその値は自然と切り替わる。これを自在に操るのが俳優というものだが、吉沢亮の出力の切り替えの鋭さには、やはり圧倒的なものがあるのだ。

■公開情報
『キングダム 運命の炎』
全国公開中
出演:山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、三浦貴大、杏、山田裕貴、髙嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋光臣、平山祐介、片岡愛之助、山本耕史、長澤まさみ、玉木宏、佐藤浩市、大沢たかお
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉、原泰久
原作:原泰久『キングダム』(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
音楽:やまだ豊
配給:東宝
©︎原泰久/集英社 ©︎2023映画「キングダム」製作委員会
公式サイト:https://kingdom-the-movie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/kingdomthemovie
公式Instagram:https://www.instagram.com/kingdom_movie/

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