エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』1週間限定上映決定 濱口竜介×岨手由貴子トークも
エドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』が、8月11日より1週間限定で上映されることが決定した。
2000年カンヌ国際映画祭監督賞受賞作『ヤンヤン 夏の想い出』などで知られるエドワード・ヤン監督が、1994年に発表した『エドワード・ヤンの恋愛時代』が4Kレストア版として蘇り、8月18日よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかにて公開される。今回の『牯嶺街少年殺人事件』の1週間限定上映は、『エドワード・ヤンの恋愛時代』4Kレストア版の公開を記念して行われる。
BBCが1995年に選出した「21世紀に残したい映画100本」に台湾映画として唯一選ばれた『牯嶺街少年殺人事件』は、1960年代の台湾を舞台に、少年少女の青春のきらめきと残酷さ、その当時の「時代のうねり」を鮮烈な映像で映し出す青春群像劇。日本では2017年に4Kレストア・デジタルリマスター版が公開された。
初日となる8月11日には、プレミア先行上映となる『エドワード・ヤンの恋愛時代』と『牯嶺街少年殺人事件』を一挙上映し、『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督と、『あのこは貴族』の岨手由貴子監督によるトークショーを含むスペシャルプログラムが開催される。なお、本国台湾では7月22日から10月22日にかけて、エドワード・ヤン監督の回顧展が開催されることも決定している。
また、濱口監督、岨手監督をはじめ、映画監督の三宅唱、俳優の玉城ティナ、クリープハイプのメンバーであり小説家でもあるミュージシャンの尾崎世界観、2024年前期のNHK連続テレビ小説『虎に翼』を手がける脚本家の吉田恵里香、『魯肉飯のさえずり』で第37回織田作之助賞を受賞した小説家の温又柔、台湾と日本で活動するイラストレーター・漫画家の高姸よりコメントが寄せられた。
コメント
玉城ティナ(俳優)
芸術は、めんどくさい。恋愛はもっともっとめんどくさい。それでも、いつの時代も人々は情けないほどに愛を求め、自分の空虚な穴を誰かが埋めてくれないかと喚き散らかしている。それぞれのやり方で。色褪せる事のない名作。
尾崎世界観 (ミュージシャン)
どこまでも満たされないし、こんなにも理解されないのに、人を愛さずにはいられない。正直で、不器用で、自分勝手。そんな登場人物たちを愛さずにはいられない。
吉田恵里香(脚本家・小説家)
常に満たされたい。些細なことで落ち込むし浮かれる。脆いけれど図太い。そんな私たちが凝縮された作品だ。だが、どうか普遍という言葉で片付けないでほしい。私たちと彼らを取り巻く事柄が、何が今と変わり、何が変わっていないのか。目をそらさず見つめてほしい。2023年にこの作品に触れられることに心から感謝したくなった。
濱口竜介(映画監督)
必然的に人間性を失わせるこの社会で、人はいったいどう生きていくのか。エドワード・ヤンの映画の価値は時間を経ても失われない。それどころか『エドワード・ヤンの恋愛時代』に含まれる洞察は、私たちにとってより切実で、必要なものとなっている。
『恋愛時代』は深い絶望の後にしか訪れない希望を描き出す。希望があるとすれば、互いに動く人と人の出会いと関わりのうちにしかないのだ。エドワード・ヤンは「どうしたら私たちはこの社会で、他者とともに生きていけるのか」という問いを決して投げ出さなかった。彼の映画にいつまでも敬意と愛を抱かずにおれないのは、そのためだ。
岨手由貴子(映画監督)
都会で若き日を過ごす孤独と高揚は、この映画の大半を占める「誰かといるのに寂しい」というシーンに似ているかもしれない。俗世間で煩悩にまみれるどこにでもいそうな若者たちは、それぞれに混乱しながら、唯一無二の美しい瞬間を獲得していく。そうやって紡がれる清々しい真理は、素晴らしいラストシーンへと繋がり、観るたびにまたこの世界を信じさせてくれる。
三宅唱(映画監督)
人の人生がはっきりと変わる瞬間が何度も映っている映画で、何度も息をのむ。夜が暗いからこそ生まれたとしか思えない会話、隣に座ったからこそ続いた会話、向き合ってしまったせいで終わった会話。夜明けの暗がりである人がふと話すのをやめ、無言で体の向きをぐいと変える瞬間、すべてが一変する。二度と元には戻らない。なにもかもが致命的で革命的で、目が離せない。不幸な時間も幸福な時間もとりかえしがつかない。そう感じだすと生きるのが怖くなる。けれど、それが悦びに変わる瞬間も映っていたと受け止めたい。
温又柔(小説家)
幸福でないからといって、不幸とは限らない。本物でなければ偽物だとも限らない。私たちはしょっちゅう二項対立の罠に陥る。でも、大丈夫。エドワード・ヤンのこの映画が、掻き乱してくれる。突破口はあると示し、その先に溢れる光に気づかせてくれる。
高姸(イラストレーター・漫画家)
彼らは人生の中で様々な答えを探そうとした。しかし、多くのことは意味を持たず、答えもないかもしれない。全ての終わりは “They just had a bad day” だ。そして、全ての始まりもまた “They just had a bad day” なのだ。
■イベント情報
『牯嶺街少年殺人事件』+『エドワード・ヤンの恋愛時代』+トークイベント
8月11日(金・祝)開催
トークイベントゲスト:濱口竜介、岨手由貴子
入場料金:4000円均一(※ムビチケ使用不可)
■公開情報
『牯嶺街少年殺人事件』
8月11日(金・祝)〜8 月17日(木)TOHOシネマズ シャンテにて上映
入場料金:2000円均一(※特別興行につきサービスデー割引等は適用外)
©1991 Kailidoscope
『エドワード・ヤンの恋愛時代』4Kレストア版
8月18日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかにてロードショー
監督・脚本:エドワード・ヤン
出演:ニー・シューチュン、チェン・シァンチー、ワン・ウェイミン、ワン・ポーセン
配給:ビターズ・エンド
1994年/台湾/1:1.85/5.1ch/129分/原題:獨立時代/英題:A Confucian Confusion/字幕翻訳:樋口裕子/日本語字幕協力:東京国際映画祭
©Kailidoscope Pictures
公式サイト:www.bitters.co.jp/edwardyang2023