『Dr.チョコレート』唯の両親が殺された真相 素直に希望の持てる魅力的なラストに
2年前の事件の直後に行方をくらましたとされる本物の“め様”の正体が、北澤睦美(香椎由宇)であると確信した野田(坂口健太郎)は、奥泉(西野七瀬)と共に唯(白山乃愛)を迎えに向かうのだが、すでに北澤一家は軽井沢の別荘へ出発していた。与田(平子祐希)に協力をあおぎ、別荘まで車を走らせる道中、野田は奥泉に自分の携帯電話を渡してチョコレートカンパニーの面々へ招集をかける。そして辿り着いた北澤の別荘で、無事に唯と再会。睦美はあっけなく自分が“め様”だと認めるのである。
6月24日に放送された『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)は最終回。“め様”を勝手に引き継いだ町野(戸次重幸)によって、世直しと称した悪事を繰り返していた“め組”との対峙は前回のエピソードでひと段落している。町野が沢入(福山翔太)に撃たれ、沢入と堤(佐野弘樹)と薮下(石川恋)が逮捕される。とはいえ、このドラマの主題にあるのは陰謀論を掲げた組織に立ち向かうことではなく、2年前のあの日、唯の両親はなぜ殺されなければならなかったのかという真相にたどり着くことに他ならない。
睦美が野田や唯たちの前で語る、あの事件に至るまでの経緯。同じ大学の研究室で学び、同じ研究所で働きながら家族ぐるみで付き合いのある親友だった睦美と葵(安達祐実)。睦美が研究所をリストラされた数年後、共に人生をかけて研究してきたサーチュイン遺伝子の研究成果をあげた葵の姿をニュースで見て込み上げた感情を晴らすため、睦美はサーチュイン遺伝子が危険な研究であるという虚偽の陰謀論をブログで書き込んだという。やがてオンライン上でもてはやされ、実生活では味わえなかった“必要とされている”実感から抜け出せずに、事件が起きてしまう。飼い慣らせない承認欲求によってもたらされる負の連鎖は(さすがにこのドラマで描かれたような事例はレアではあるが)充分に現代的なテーマといえよう。
同時に、このような大きな規模のサスペンスに波及していった物語であっても、最終話で帰結する部分はいたってシンプルだ。事件の黒幕がわかっても、奪われた両親の命は戻ってこない。唯のなかにある「パパとママに会いたい」という思いは、たとえ真相がわかったところで決して変わりようがない。ここで思い出したのは、本作と同じ企画・原案の秋元康をはじめとした座組みで作られた『あなたの番です』(日本テレビ系)と『真犯人フラグ』(日本テレビ系)の2作だ。