『あなたがしてくれなくても』三竿玲子Pに聞く、“リアル”の作り方 地獄のランチの裏側も

『あなたがしてくれなくても』三竿Pに聞く

夫婦の会話をするきっかけに

ーー登場人物の年齢は原作漫画より少し上に設定されているそうですね。

三竿:キャラクターの根幹は変わっていないのですが、ハルノ先生に相談して、漫画よりも年齢を上げて、もう少し落ち着きがある設定に変えました。性格とか、キャラクター自体は変えていませんが、役者さんが演じるにあたって、その人に落とし込む作業が必要で、演者さんが決まってから、その人に落とし込むために設定を少し変えています。

ーー演者は後から決まったのですか?

三竿:ドラマ化が決まってから、イメージに合わせてオファーしました。原作が大ヒット作なので、女性陣は元々、原作を読んでいて、この役が私に来るんだと喜んでくださいました。逆に男性陣は誰も読んでいなかったので、読んでくださいとお願いするところから始めました。

ーー男女で受け止め方が大きく違うドラマなのかなぁと思います。

三竿:漫画の感想を話していると誰に共感するかで意見が分かれるのが面白かったんですよね。女性陣の中でもみち派と楓派で別れますし。うちの会社の男性陣は陽一派が多かったのですが、誰に感情移入するかによって作品の見方も変わるし、色々な楽しみ方ができる。だから4人それぞれの気持ちをしっかりと描こうと思いました。

ーー明確な意志を持って行動している人がいないのが面白いですよね。自分に自信がありそうな楓も常に不安を抱えている。

三竿:人間の悩みなので、今日がんばろうと思っても、明日がんばれないということはありますよね。「人間ってさっきまで笑っていたのに、次の瞬間には涙が出ることがある」という話は、打ち合わせでよくしました。前のシーンで深刻な話をしていたのに、次のシーンでは楽しそうにご飯を食べていたりする。特に夫婦の場合はそういうことが多いですよね。同じ狭い空間に、嫌でも一緒にいないといけないので、喧嘩をしてもどこにも行くことができないし、ベッドが一つしかなかったら一緒に寝ないといけないというのがリアルな生活だと思うんですよ。

ーーハラハラしながらドラマを観ていた夫婦は多かったと思います。

三竿:セックスレスは切実な問題ですが、このドラマを観て、夫婦で話すきっかけになればいいなぁと思っています。「陽一がこういうふうに言っていたのが私は嫌だと思うんだよね」と旦那さんにポロッと言うだけでも伝わると思うんですよね。全国の家庭を凍りつかせたいわけではないので会話をするきっかけに使っていただけたらいいなぁと思います。

ーー陽一と同じことをしていてヤバいと思うことが何度もありました。

三竿:全国の陽一さんに気づいていただけると、嬉しいです(笑)。

ーー三竿さんは映画版『昼顔』を制作された後、しばらく現場を離れていたそうですが、復帰して変わったと感じたことはありますか?

三竿:子育てもあって現場を離れていたのですが、『昼顔』の時はTVerの見逃し配信がなかったので、地上波でリアルタイムで観てもらうことを、より意識した作りになっていたと思います。もちろん今回も、地上波を意識しているのですが、TVerという新たな可能性があるのが、大きな違いですね。

ーーセックスレスの話だったので、一人でこっそりみている人も多かったみたいですね。これも配信ならではの現象なのかなぁと思います。

三竿:人と観るのが難しいという理由で観られなかった番組が、TVerがあることによって、こっそりとでも観てくれるようになって、反響が数字となってわかるようになったことは有難いことだと思います。お茶の間を凍りつかせた第2~3話の頃はTVerで観ていた方が「地獄のランチ」あたりから家族で観ても大丈夫だとわかって地上波に戻ってきてくださっているという面白い現象も生まれています。ですので、なるべく地上波で観てもらって、TVerでも観てもらえるよう頑張りたいなと。

ーーいよいよ最終回ですが、原作が完結していないので、ドラマの結末はどうなるのでしょうか?

三竿:ドラマはドラマ、漫画は漫画なので、スタート地点は同じですが、ドラマを観終えてから漫画を読んでいただいても、違う世界があると思います。原作者の方にも、漫画がせっかく続いているのに、漫画のまだ描いていない部分をドラマで見せてしまうのはよくないから、漫画を読んでいる人がドラマを観ても、違う見え方がして面白いという作り方をしたいと初めに提案しました。ですので、ドラマの最終回を観終えたら、今度は漫画の結末が楽しみになると思います。

ーー最後に、最終話の見どころを教えてください。

三竿:第10話を観た人が想像するような最終回の始まり方ではないので「なんだ?」という驚きがあるかと思います。最終話はこうなるだろうという想像を裏切っている自信はあるので、最初から最後まで見逃さずに観ていただけると嬉しいです。

■放送情報
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:奈緒、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
演出:西谷弘
プロデュース:三竿玲子
主題歌:稲葉浩志「Stray Hearts」(VERMILLION RECORDS)
挿入歌:稲葉浩志「ダンスはうまく踊れない」(VERMILLION RECORDS)
音楽:菅野祐悟
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/anataga_drama/
公式Twitter:@anataga_drama
公式Instagram:@anataga_drama
公式TikTok:@anataga_drama

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる