『あなたがしてくれなくても』を男性側視点で語る 永山瑛太と岩田剛典の決定的な違い

『あなたがしてくれなくても』を男視点で語る

 奈緒が主演を務めるドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)は、セックスレスに悩む2組の夫婦を描く。今期いちばんと言ってもいいほどのSNSの反響があり、共感、嫌悪感、人によって様々な見方をすることができる。そんな今作について、あくまでも筆者の独断と偏見で、今回は2組の夫婦の夫である陽一(永山瑛太)と誠(岩田剛典)を中心に紐解いてみたい。

 第6話の放送で、陽一が結婚生活に終止符を打ってしまってもおかしくない告白をする。「みちだけできないなんて……」という痛恨の一言。みち(奈緒)は「どういう意味? 私だけって何?」と問いかけ、陽一は「ごめん。俺、一度だけみちのこと裏切った」と馬鹿正直に告白する。1000歩譲って、一回の浮気ならまだ弁明の余地があってもおかしくないが、ただ「みちだけできない」というこの余計な一言。これはもう、「嫌い」や「愛していない」という言葉以上に、女性としてのプライドやアイデンティティがズタズタになるほどの一撃。元々自分に魅力がないのかと悩んでいたみちだけに、とどめが刺される言葉だ。SNS上では、「バカ旦那」など批判の嵐が起きていたが、これは陽一がこれまで溜まっていたプレッシャーに耐えかねて決壊した状態の言葉で、擁護してあげたくなる部分もある。

 本作の始まりのころ、陽一は意識が高くドライな人で、夜の営みがないのは妻に愛情がない、もしくは偽装結婚のように異性に興味がないのかと思われた。しかしだんだんと、ポーカーフェイスだけど真面目で不器用な人物だということが分かってきた。妻のことは好きだけど、EDになってしまう。それは、恋人同士の関係から、性の対象には見えない“家族”の感覚になったということか。EDになることで変に優しくされたり、妻を満足させられない自分への情けなさが募り、自信もなくしてしまう。妻が気を使っているからこそ、ガッカリさせる辛さ、男としてのプライド、そして期待に応えなきゃというプレッシャー……。家に帰れば、毎晩期待している妻。これが鈍感な人なら何とも思わないかもしれないが、真面目な性格ゆえに、陽一は負のスパイラルに陥っていったのだろう。頑張ってる人に「頑張って」の言葉が苦痛になるのと同じだ。カフェの前で太陽を見つめ、「ああ、夜が来る……」とつぶやくシーンがあるが、彼がどれだけ追い込まれているのかが分かる。

 浮気したカフェの店員・三島結衣花(さとうほなみ)は、ボーイッシュで、カラッとした性格であり、色気も持ち合わせている魅力的な女性。ただ、1人歩く背中はどこか寂しげで、陽一がバイクで家まで送った時は何かが解放されたように喜ぶ姿を見せた。陽一が必死になって何かに堪える彼女の姿にシンパシーを感じ、弱さを垣間見て抱きしめてしまった気持ちも分からないでもない。

『あなたがしてくれなくても』は単なる不倫ドラマではない 惹きつけられる3つの理由

毎週木曜日に放送されている『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)を楽しみにしている。このドラマのどこに魅力があるのだろうと…

 ただ陽一は、その後しっかりと三島に謝って拒否をする。実は、元不倫相手の妻から訴えられている三島。三島は「人のものを取る最低な女なんで」と言うと、「俺は思わないけど。いい女だと思うよ」と言う陽一に抱きつく。だが陽一はそっと離し、「悪い。俺、あいついないとダメだから」と言い、三島から「店長もいい男ですね」と言われる。おそらく、これまで陽一の心には何かが欠落していたが、三島と一緒にいたことで、大事なものが分かっていったのだと思う。

 ただ、この「いい人ですね」と言われたこと、またオーナー(宇野祥平)とみちと4人で焼き肉を食べた時、浮気診断の会話で「愛されている人に本当のこと言われるより、騙されている方が幸せって言うじゃない」と言うオーナーに、みちが断言した「私は本当のこと言ってほしいです」という言葉。それらが頭に残る中、みちは旅行を期待し、「病院に一緒に行ってあげる」などの無意識のプレッシャーを与える。そして、陽一には浮気をしていたという自己嫌悪もある。真面目すぎるがゆえに、全て自分が悪いことは分かっている。だから、いろんなものがつながり追い詰められた挙句、「みちだけできないなんて」という言葉に繋がってしまった。鼻水を垂らすほど、ここまで陽一は追い込まれていたのかと。その後の洗い物をする陽一の背中は、もはや抜け殻のように覇気がなくなっていた。バイク乗りだったり、カフェの仕事も自分の世界でできる仕事で、おそらく本来はマイペースが好きな人。結婚に向いていなかったと言われればそれまでだが、陽一がこうなってしまった気持ちも分からないでもない。

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