坂口健太郎の演技は“父性愛”が滲む 『Dr.チョコレート』で俳優として新たな領域に

『Dr.チョコレート』坂口健太郎の“父性愛”

 そして、Teacherの最大の魅力は、やはり唯に対する父性のような愛情を見せるところだ。いつもクールなTeacherだが、唯のことになると激怒したり、車に轢かれても必死に走ったり、感情むき出しで必死に守ろうとする。当初は歳の離れた仲の良いお兄ちゃんと姪っ子のような、唯のワガママに付き合ってあげるような距離感だったように思う。第3話では、Teacherを通さず唯の独断で手術をした際に、報酬1億円と秘密保持契約書を交わしてないことで、Teacherは「好きで闇医者やらせてるわけじゃないんだよ俺は! 頼むから危ないことはするな」と、唯に初めて感情を露わにして叱る。これまでクールだったTeacherだからこそ本気度が伝わる説教だった。

 さらにこの一喝してから冷静になって「帰ろう」と囁き、2人一緒に並んで帰る姿からは、父親のような愛情と哀愁が伝わってきた。以降も、ごめんなさいと泣きながらTeacherに言う唯をそっと抱き締めたり、唯のこれからのことを考えた時、おんぶした時の何気ない日常を思い出すなど、実の父親のように唯のことを想う。これも淡々とした表情だからこそ、何かを堪えていたり、これからの別れを決断するなど、様々な感情に見えてくる。もはや、娘を嫁に出す父親の心境のようだ。

 そして第8話で唯を預け別れる時に、「Teacherがいてくれたから大丈夫、この先も一緒にいて」と唯が泣きつくと「もう、普通の子供に戻るんだ」と抱きしめる。そして真っ直ぐ目を見つめ「幸せに生きろ」と、力強くも優しく声をかける。この鼻をうっすら赤くなるほど涙を堪えた演技が、娘の幸せのために別れを告げる断腸の思いの父親そのものだった。いや、それ以上の関係性か。これまで坂口は、一匹狼的な役柄が多く、まして子供を持つ父親というタイプの役者ではなかった。ただそうしたイメージの役者だからこそ、初めて娘を持った親のように、ストレートに愛情表現するのは照れ臭いけど、不器用な娘への愛情を感じさせることができたのだろう。いやむしろ、実の親子ではない特有の気を使う関係からの一線を超えたかけがえのない存在、それを見事に感じさせる演技で、“父性愛”という俳優としての新たな領域へ達したとも言える。ただこれは、白山乃愛が対等に演技をしていることにも大きな意味がある。

■放送情報
『Dr.チョコレート』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:坂口健太郎、白山乃愛、西野七瀬、葵わかな、鈴木紗理奈、前田旺志郎、古川雄大、小澤征悦、斉藤由貴ほか
企画・原案:秋元康
脚本:渡辺雄介
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、岩崎広樹、本多繁勝
演出:佐久間紀佳、南雲聖一、宮下直之
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dr-chocolate/
公式Twitter:@drchocolate_ntv
公式Instagram:@drchocolate_ntv

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