『らんまん』阿部亮平、山根和馬、河井克夫 ワイルドな魅力あふれる大畑印刷所俳優たち

『らんまん』大畑印刷所の俳優たちを紹介

 現在放送中の連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)。万太郎(神木隆之介)は石版印刷での植物学会誌創刊のため、大畑印刷所で下働きを始めた。大畑印刷所の人々は、十徳長屋や東京大学植物学教室の面々とはまた異なる雰囲気を醸し出している。

 万太郎を受け入れる工場主・大畑義平(奥田瑛二)は、第9週で初登場を果たした際、やかんから直に水を飲むという姿で現れ、『あさイチ』(NHK総合)の“朝ドラ受け”ではMC陣が奥田瑛二の渋い魅力に言及していた。

 渋い魅力やワイルドな雰囲気を漂わせているのは義平だけではない。本記事では、大畑印刷所の職人・前田孝二郎(阿部亮平)と宮本晋平(山根和馬)、絵師として働く岩下定春(河井克夫)について紹介していく。

万太郎への教え方が丁寧な職人・前田孝二郎(阿部亮平)

 コワモテな印象の前田だが、大畑印刷所に出入りするようになった万太郎をなんともいえない表情で度々見つめていた。工場内を興味津々で歩き回る万太郎を気にかけていたのだと考えられる。そんな前田は第48話で印刷後の石灰石を平らに研ぎ直す作業工程を、第50話では石版印刷の仕組みを万太郎に説明する。その教え方がとても丁寧で分かりやすいことから、前田の面倒見の良さがうかがえる。加えて、教える口調がはつらつとしていることから、前田もまた石版印刷に魅了されていることが伝わってきた。

 前田を演じている阿部亮平と宮本を演じている山根和馬は、令和元年から極悪ユニット「純悪」を結成している。悪役を中心に演じてきた2人が結成した「純悪」は、強面な見た目とは裏腹にハートフルな内容の動画コンテンツが人気を博している。職人・前田と宮本もまた、強面な見た目とギャップのある人物像が魅力的といえる。

 ちょっとした視線の運び方から、新人の万太郎に意識を向けていることが伝わってくる前田だが、万太郎の行動に振り回されることもしばしば。研ぎ作業を終えた後、まっ平らな版面に感動した万太郎が「うわっツルツルじゃ!」と石版をなでた瞬間、前田の眉尻がぐっと下がり、悲壮感たっぷりな面持ちに変わった。前田は「お……お前……!」と愕然とすると「指の跡つけたら最初っからやり直しだろうが!」と万太郎に詰め寄る。万太郎の些細な行動で作業を一からやり直すことになった前田の落胆っぷりはコミカルに映った。第50話では「ヒルムシロ」を「ヒルゴ」と呼んだことが、万太郎の植物研究欲に拍車をかけてしまった。「前田さん、おくにはどこですか?」「どこら辺に生えちゅうがですか?」「山の方ですか?海の方ですか?」と万太郎に食いつかれ、たじろぐ姿が面白い。

万太郎をライバル視? 山根和馬演じる職人・宮本晋平

 宮本の演技は、大きく動く表情と天真爛漫な万太郎への反応が魅力的だ。

 義平から「お前面倒見ろ」と言われたとき、不服そうに口を尖らせ「何で? 俺、忙しいんすけど! 早く印刷機回したいんすよ!」と返した。感情が素直に表に出る人物だということが一目瞭然で清々しい。万太郎と言葉を交わした際、世間離れした万太郎の回答にややギョッとしているようにも感じられた。その後宮本は、故意か否かは定かではないが、万太郎に研磨用の砂を浴びせると「ちゃんと受け取れっつったろ」と言うと、フォローもせずにその場を立ち去る。この出来事は、のちに、竹雄(志尊淳)を泣かせる要因ともなった。

 だが、万太郎が宮本の行動を気にも留めずに翌日も工場へやってきたことで、宮本の人物像は意地悪な人という印象から、人間味があり親しみのある印象へと変わっていった。これは山根の豊かな表情変化から感じられる剽軽さの賜物ともいえる。

 第48話で宮本は義平に「鉄道のチラシ、俺に刷らせてくださいよ!」と直談判していたことから、画工を目指していることがうかがえる。万太郎が岩下から直々に学んでいるのを見たときの「うわっ、槙野が書いてる!」という反応には可笑しみがある一方で、万太郎が初めて摺った絵を見て「いい絵って感じしねえ。地味じゃねえか?」という姿からはどことなく悔しさが滲み出ている。面倒臭さや焦燥感、驚きや悔しさなど、感じたことがそのまま顔に出る宮本が今後どのように万太郎と絡んでいくのかが楽しみだ。

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