『スイートモラトリアム』インタビュー
鈴鹿央士が大切にする現在進行形の言葉 「『心の中にいる』はすごくいいなって」
鈴鹿央士が主演を務めるドラマ『スイートモラトリアム』が、TBS系にて5月23日から放送される。たまいずみによる同名漫画を実写化した本作は、大学生・柏木心と、心の今カノ・上条小夜(田辺桃子)、元カノ・大森りんご(小西桜子)が織りなす三角関係を描いた青春ラブストーリー。
2022年に話題を呼んだドラマ『silent』(フジテレビ系)では、“元カレ”として随一の人気を誇った戸川湊斗を演じた鈴鹿。本作では、今カノと元カノの間で揺れ動く心をどう演じたのか。放送を前にじっくりと話を聞いた。(編集部)【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
柏木心を演じる上で意識したのは“目”
――柏木心は鈴鹿さんにとって演じやすい役でしたか?
鈴鹿央士(以下、鈴鹿):演じるのは難しかったですね。心くんには選択肢が多すぎると感じました。僕が読んで想像できる心くんの心情だけでもすごくたくさんあって。でも、彼はあまり決断をしないので、台本には答えが書いていないんです。だから自分で決めないといけません。その枝分かれした先の答えを見つけていくのが難しかったですね。「どういうことで悩んでいるのだろう」という疑問が無限に出てくるキャラクターだったので、そのあたりについては監督と話し合いながら演じました。
――演じる際に、特に大事にしていたことはありますか?
鈴鹿:目です。メガネをかけているし、前髪も目にかかるくらいだったので目の開き方で見え方が全然変わってくるんです。ちょっと目線を下げるだけでも目が隠れてしまうので、目を隠すときと出すときを、意識しないでもできるようになろうと思いながら演じました。
――“元カノ”りんごちゃん役の小西桜子さんと“今カノ”小夜ちゃん役の田辺桃子さんの第一印象と、共演された感想を聞かせてください。
鈴鹿:小西さんとはリハーサルの時が“初めまして”だったのですが、「ふわふわしてるなぁ」というのが第一印象でした。りんごちゃんとは全然違う印象だったので、どんな方なんだろうと思っていましたが、現場に入るとまっすぐにお芝居と脚本に向き合っていましたね。「自分はこうしたい」というのがはっきりしている方で、それを現場で言葉にして、監督や僕を含めいろいろな人と話をしているところが素敵だなと思いました。田辺さんは「真面目そうだな」というのが第一印象。いろいろな作品で田辺さんを見ていたし、最近もドラマで見たばかりなので、どういう人なのかなとは思っていました。でも、現場に入ったら結構面白いことも言う方で、一緒にふざけたりもしています。今回の現場では、小西さんと田辺さんと僕と監督とカメラマンさんと、みんなで話し合う時間がたくさんありましたが、小西さんと田辺さんは本当にまっすぐで、お芝居が好きなお2人です。そうやって刺激をもらえる時間が過ごせてよかったし、ありがたいことだと思っています。
――小夜とりんご、それぞれに対する柏木心の心情を鈴鹿さんはどのように捉えましたか?
鈴鹿:僕もすごく悩みました。今付き合っている小夜ちゃんはどちらかというと心くんに似た人で、りんごちゃんとは全然違う人です。本当に正反対の2人で、どちらも魅力的な人なので、自分的には心くんが「どう惹かれていくのだろう」という部分を考えました。シーンごとに、この時は小夜ちゃんに傾いていて、この時はりんごちゃん……というように天秤にかけるつもりで考えましたね。その一方で意外と心くんはどちらでもないのかなとも。天秤にかけようとしたのが間違いだったかもと思ったりもして、心くんって難しいなと思いながら演じていました。
――鈴鹿さん自身の目線からも、それぞれに惹かれるところはありますか?
鈴鹿:あります。でもやっぱりすごく個性的な人と、穏やかで自分のことを見守ってくれる人がいるなら、その“中間の人”がいればいいのにと思いますよね。
――鈴鹿さんが感じる柏木心の魅力を教えてください。
鈴鹿:「モラトリアム」というか、どちらかを選択できない心くんもいるのですが、意外と男らしい一面もあって。そのギャップは魅力なんじゃないかなと思います。結構チュッチュしているシーンもあったりして「心くん、男っぽいなぁ」と思いながらやっていました。
――台本の中で印象的なセリフやシーンがあれば教えてください。
鈴鹿:物語の最後の方で、「人が心の中にいる」という表現が出てくるシーンがあるのですが、頭で考えているわけじゃないけれど心の中にその人がいるというのは、本当にそうだよなと思う自分がいて。一回愛した人というのは、それだけで心の中に残っちゃうよなと思いました。ちょっと前に友達と「付き合って別れたら『愛してる』が『愛してた』に変わるのが嫌だよね」という話をしました。過去形になるのがすごく苦しいという話をしていて。でも「心の中にいる」というのは、現在進行形だから、過去形じゃない。そういう言葉ってなんかすごくいいなって思いましたよね。
――今回、主演ということで座長として気をつけたことはありましたか?
鈴鹿:僕自身が真ん中に立つタイプではないし引っ張っていく感じでもないので、みんなが楽しめればいいなと思ってやっていました。縮こまっちゃうと縮こまったお芝居になってしまうし、いいものも出なくなっちゃうので、みんなが楽しみながらやってくれたらいいなという気持ちでしたね。この現場はスタッフの皆さんが素敵で、良い雰囲気を作ってくださっています。キャストとスタッフとがチームになって面白がってやってくれれば一番いいのかなと思っています。
ーー過去の作品の演技があったから今に繋がっていると感じることはありますか?
鈴鹿:映画『バイオレンスアクション』や『おっさんずラブ–in the sky–』(テレビ朝日系)に出演したときに、監督の瑠東東一郎さんが、「央士はまっすぐお芝居して。それがいいところだから」って言ってくださいました。今でも心に残っている言葉はたくさんあって。その作品で出会った人たちとは今でも関係が続いていて、そこでもらったものは活きています。その監督の言葉は今回の撮影中にも浮かんできて、「あ、頑張れるな」と思いました。