『おとなりに銀河』は原作とはまた違った魅力がある “遊び”が実写化の成功要因に

『おとなりに銀河』実写化の成功要因

 一方で家族それぞれの心の機微もゆっくりと流れる時間の中で奥深く描かれてきた。漫画賞を獲得したしおりの作品のクオリティに悔しさを覚える一郎、兄の入院に何もできずに自分を情けなく思うまち。『おとなりに銀河』が伝えているのは、他者との関わりの中にいる自分という存在、アイデンティティだ。

 最終週に入る前の第28話では、京吾(藤原大祐)視点でのしおりの過去が描かれた。しおりが好きな京吾のその理由が「なぜって姫ですから」というのは、彼が本人そのものを見ていないということを表しており、島を出たいしおりは「許されるわけがない。でも誰に……」と自問自答する。京吾と比較するのも少々酷だが、一郎は「自分と違う人がいるから、逆に自分もいていいと思える」という考えの持ち主。「素直に新しいものを受け入れてくれるところ」「自分にはない視点」「物怖じしない思い切った言動」――そんなしおりが突如目の前に現れたことによって、自分が存在していいのだと一郎は実感する。その人を思う心は独自のしきたりに縛られた喚姫島にはない考え方だ。

 最終週で焦点となるのは、しおりは島を継ぐのか、そして一郎たち家族との暮らしはどうなるのか。そこにはしおり、一郎それぞれの決断がある。

■放送情報
『おとなりに銀河』
NHK総合にて、毎週月曜~木曜22:45〜放送中【全32回】
出演:佐野勇斗、八木莉可子、小山紗愛、石塚陸翔、北香那、本多力、中田クルミ、大津尋葵、坂田梨香子、河井青葉、前川泰之ほか
原作:雨隠ギド『おとなりに銀河』
脚本:三浦有為子
音楽:小田切大
主題歌:有華「HAPPY DATE」
制作統括:谷口卓敬(NHK)、高城朝子(テレビマンユニオン)
プロデューサー:石井永二(テレビマンユニオン )
演出:岡下慶仁(テレビマンユニオン)、熊坂出、國領正行
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる