『おとなりに銀河』は原作とはまた違った魅力がある “遊び”が実写化の成功要因に

『おとなりに銀河』実写化の成功要因

 夜ドラ『おとなりに銀河』(NHK総合)が5月22日の放送より最終週に突入する。

 毎週月曜から木曜まで22時45分から各話15分、全32話(計8時間)で展開される『おとなりに銀河』は、原作の物語をじっくりと丁寧に描きながら、それでいて実写ドラマとしてのオリジナリティもしっかりと纏った傑作だ。

 『おとなりに銀河』は雨隠ギドの同名漫画を実写化したラブコメディ。現在まで5巻が発売中で、先日『good!アフタヌーン』(講談社)にて連載が最終回を迎えたばかりというタイミング。ほぼ同時期からアニメ『おとなりに銀河』(TOKYO MX)もスタートしており、そちらはそのまま原作に沿ったラストに辿り着くのかもしれないが、ドラマの方は撮影リミットもあり、しおり(八木莉可子)の故郷である喚姫島に向かうパート「故郷訪問編」(原作コミックスでは5巻)が最終週で描かれるようだ。

 『おとなりに銀河』には、五色家のしきたりである「流れ星の民の姫」「棘に触れたことにより婚姻関係の契りが結ばれる」といった壮大なファンタジー要素があるが、その縛りこそが日常の中にある幸せを際立たせる役割を持っている。本作の最大の見どころは、一郎(佐野勇斗)としおりの恋愛模様、そして、まち(小山紗愛)、ふみお(石塚陸翔)を交えた温かな家族の物語だ。

 特筆すべきは、八木莉可子演じるしおりの感情表現。筆者はこの夜ドラを視聴した後に、原作コミックスを5巻まで読んだいち読者であるが、主要キャラの中ではしおりのみが原作から大きくビジュアルが乖離している。

 例を言えば彼女の髪色がその一つであり、原作ファンからしてみれば嫌悪感を抱くポイントなのかもしれないが、そのハンデは瑞々しいまでの芝居によって余りあるほどにカバーされている。原作でも序盤の大きな山場として描かれているしおりが一郎への「好き」という感情に気づく第6話を皮切りにして、加速度的に2人の距離は縮まっていくが、実際にイチャイチャを披露している時よりも、妄想が爆発している際の方が芝居も大いに弾けている。

 印象的なのは第26話で、誕生日当日を迎えたしおりが一郎からのプレゼントにドキドキが止まらないシーン。どちらかといえば一郎よりも欲望に正直なしおりは妄想も多めで、ピノコの「アッチョンブリケ」ポーズや下唇を突き出す仕草は、夜ドラとしてのコメディ要素を極限に強めた独自の演出と言える。それらはある種、原作からの大きなギャップが存在しているからこそできる“遊び”なのではないだろうか。

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