『らんまん』神木隆之介、宇崎竜童、宮野真守の静かだが熱い思い 万太郎の見据える先は?

『らんまん』万太郎の熱い思いと見据える先

 朝ドラ『らんまん』(NHK総合)第20話にて、万太郎(神木隆之介)は逸馬(宮野真守)に連れられ、ある人物と出会う。それは、ジョン万次郎(宇崎竜童)。万太郎が幼い頃に読み、憧れた見聞録『漂巽紀畧』の著者だった。「自由」が何度も叫ばれる第4週「ササユリ」は、万太郎の中に自由とは何かが芽生えていく、植物学者の道を志すまでを繋ぐ大事な週である。

 この第20話は、始まってから7分あたりまで、ジョン万次郎の話を聞く逸馬と万太郎とのシーンが続いていく。漂流したところをアメリカの船に助けられたジョン万次郎は、そのままアメリカで暮らし、海外の人々と世界中の海に繰り出していく。万太郎もまたその物語に心震わせた一人だったことを興奮気味に伝えるが、ジョン万次郎の表情は沈んでいた。

 ジョン万次郎は「帰ってこん方がよかった」とかつての出来事を振り返る。黒船に乗って日本にやってきたペリー、さらに外交官のタウンゼント・ハリス。英語に関して、かつて日本でジョン万次郎の右に出るものはおらず、当然ペリーの通訳は彼が適役であったが、幕府からアメリカのスパイではないかと疑いをかけられてしまった。ジョン万次郎であれば言葉だけでなく、住んでいた経験からアメリカ側の事情も理解してあげられる。ジョン万次郎は、その志と自信に蓋をし、己を殺した。

 ジョン万次郎が乗っていた捕鯨船の上には、皆が互いの力を認め合う、自由と自立だけがあった。ジョン万次郎にとっての自由とは、海で見た夢そのものであり、たくさんの命ーー大海原、クジラ、仲間たち。万太郎にとってのそれらが植物であった。思いが呼応するようにして、ジョン万次郎は万太郎に「人の一生は短い。後悔はせんように」と告げる。

 さらにジョン万次郎から手渡されたシーボルト執筆の『日本植物誌』を見て、万太郎は自分にしかできないこと、やらなければいけないことに気づく。緑豊かな地に暮らし、植物の絵が描けて、英語で読み書きができ、日本の植物を世界に知らせることもできる。その万太郎の心に湧き上がる志は、後悔を引き連れて生きるジョン万次郎の無念を晴らすという役割も幾分含まれているだろう。

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