『らんまん』神木隆之介が顔で笑って心で泣く 宮野真守&島崎和歌子がもたらす新時代
そんな万太郎を見て、罪悪感を隠せないのは竹雄だけじゃない。タキもまた万太郎が無理をしていることに気づき、そうさせてしまっていることに少なからず申し訳なさを感じているようだった。子供の頃のように万太郎が帳場で家の仕事をするふりをして、植物の絵を模写していると勘違いし、怒鳴りかかろうとするタキ。その勘違いと分かった時のホッとしたような、一方でちょっと残念そうな表情が印象的だ。
好きなことに向き合っている時に万太郎が見せる嬉しそうな顔や真剣な表情。今までは悩みの種だったはずのそれらが消えた途端、タキや竹雄の心にはモヤっとした気持ちが広がる。どちらも峰屋の人間としては万太郎に当主としての自覚を持ってほしいと願う一方で、一個人としては万太郎にただ幸せになって欲しいと願っているのだろう。万太郎だけじゃなく、綾や竹雄、そしてタキも自分自身がこうしたいという思いと、他者から期待される役割との狭間で苦しんでいる。
そして、今回新たに登場したのが自由民権運動を先導する早川逸馬(宮野真守)だ。彼は峰屋という屋根の下で自分の気持ちを押し殺す万太郎たちとは対照的に、広々とした空の下で自由を叫ぶ。声を仕事にする宮野の圧倒的な声量と言葉に込める力の強さも相まって、早川の演説はたまたまそれを耳にした綾の心に深く突き刺さった。聴衆の一人、楠野喜江(島崎和歌子)は綾を一目見て、彼女が抱えているものを察したかのように「おなごこそ今から生きんと!」と運動への参加を促す。明らかに変わりつつあるこの時代の流れが、良い意味で万太郎たちをも巻き込んでくれることを期待する。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK