ムロツヨシ、『どうする家康』で“戦国無双”状態 “主役を食う”新しい秀吉に

ムロツヨシ、『どうする家康』で戦国無双

 この“主役を食う”というのは、ときにポジティブな意味合いで用いられるが、筆者としては基本的にネガティブなものだと考えている。各キャラクターにはそれぞれが守るべき立ち位置(=役割)があり、それを超える者がいると作品全体の統制が取れなくなる。つまり、バランスを欠いた作品となる。特にこういった多くの登場人物が入り乱れる作品ではバランスこそが命だ。主役を食う演技などというのは和を乱すのと同義。視聴者にとってひどく邪魔になりかねない存在なのである。

 しかし本作における秀吉は、自身に与えられた役割を超え、和を乱すキャラクターだ。多くの作品でコメディリリーフとしての才能を発揮してきたムロの力は健在で、登場するたびに作品全体のトーンを弛緩させてきた。そのおちゃらけっぷりは、ちょっとやり過ぎだと感じることもあったほど。けれども近年のムロの代表作にして彼のキャリアにおける重要作であろう『マイ・ダディ』(2021年)と『神は見返りを求める』(2022年)で見せたような、コメディリリーフとしての立ち位置を守るのが彼の仕事のすべてではない。世間が求めるその役割を、ひっくり返すことだってする。そういった視点で『どうする家康』でのムロを見ると、何をやってもおかしくはないだろう。

 やがて藤吉郎は秀吉として、三英傑の一人となる。並ぶのは主人公・家康と、信長だ。ムロは主演の松本潤と、岡田准一と並ぶこととなる。『どうする家康』で俳優・ムロツヨシが主役を食うというのは、もちろんポジティブな意味合いのもの。さて、どうする秀吉。主役を食うことを許された彼は、今後の本作において文字通りの“戦国無双”を展開していくに違いない。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる