『どうする家康』岡田准一の繊細な演技に宿る織田信長の“怖さと愛情” 物語を動かす人物に

岡田准一の繊細な演技が光る織田信長

 『どうする家康』(NHK総合)では、主人公の徳川家康(松本潤)に戦国時代を生きるがゆえの生死に関わる困難や問題が降りかかり、家康はその都度「どうする?」と究極の選択を迫られている。岡田准一が演じる織田信長の存在は家康にとってあまりにも大きく、竹千代と呼ばれていた家康の幼少期から2人の関係性は変わらず、信長は家康を窮地に追い込むことを楽しんでいる気配さえある。

 本作において織田信長が初めて登場したのは、第1回「どうする桶狭間」のラストだった。当時の家康は駿府の今川館で人質生活を送っていたとはいえ、当主の今川義元(野村萬斎)を父のように慕い、今川家嫡男・今川氏真(溝端淳平)とも兄弟のように剣術の手合わせをするなどして過ごしていた。

 今川方の大高城を織田信長が砦を築いて包囲し、攻撃していたため今川義元が総大将となり出陣。家康率いる三河勢は、大高城に米を運ぶ役目を仰せつかった。まさか桶狭間で今川義元が織田信長に討たれるとは思いもよらず、敵陣に取り残されることになった家康とその家臣たち。

 そこにやってきた信長は、黒い馬に乗り、黒いマントをなびかせ「待ってろよ、竹千代。俺の白兎」と不敵な笑みを浮かべた。魔王のような風格漂うこの信長初登場シーン、SNSでも大いに話題になっていた。

 家康が「あれはケダモノじゃ! 飢えた狼じゃ!」と震え上がり、思考停止に陥るほどの恐怖を植え付けた信長の怖さ。俳優としてアクションにおいても、ほかの俳優への指導やアドバイスなど、プロとして徹底的に自らも鍛え上げている岡田だからこそ表現できるものだろう。肉体的にも精神的にも思う存分鍛え抜かれた戦国武将、織田信長を自分なりに自由に作り上げているようにも見える。

 『どうする家康』公式サイトの織田信長のキャラクター紹介として「家康がその背中を追い続けた男」とあるが、常識を超える発想力だけではない人間としての器の大きさ、カリスマ性を感じさせる魅力を表現してこその、本作の信長。回を重ねるごとに、怖いだけではなくアニキ的な面倒見のよさ、強い圧の中に密かに愛情を匂わせる気配を漂わせることもある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる