『フェイブルマンズ』でも重要なワンシーンに アメリカ青春映画頻出の“プロム”を解説
学校生活が描かれたアメリカ映画に必ずと言っていいほど登場する「プロム」。最近の映画なら、スティーヴン・スピルバーグ監督作『フェイブルマンズ』で主人公の人生の分岐点のひとつとして「プロム」での出来事が紹介されていたし、映画『キャリー』や『ミーン・ガールズ』はプロムが物語のクライマックスになっている。新型コロナウイルス感染症が広がり始めた頃に広く視聴されたパンデミック映画『コンテイジョン』では、ウイルス感染によるパニックのひとつの区切りとして、ワクチン接種者によるプロムが描かれていて印象的だった。Netflix映画『シニアイヤー』は、競争社会へのアンチテーゼとしてプロムのキングとクイーンの廃止を訴え、プロムのあり方を問いかけている。
だが、日本にはプロムの文化がほとんどなく、あったとしてもアメリカほど大々的ではない。そこで今回は、映画をより理解するために海外の「プロム」文化について語っていきたい。
プロムは卒業を控えた高校生のためのフォーマルなパーティ
プロム(promenadeの略称)とは、卒業式の前に開かれるパーティのこと。学生はドレスアップして参加するのが一般的だ。昔ながらのやり方であれば、男性が女性をプロムに誘う。これは、プロポーズとプロムをかけて「プロムポーザル」なんて造語が生まれるほどの一大イベントなのだ。最近だと、Netflixシリーズ『ウェンズデー』で、プロムに誘いたいけれどなかなか素直に言い出せない様子が描かれていた。
プロムの当日は、肌の手入れと髪のセットを済ませ、事前に用意しておいた衣装に着替えておく。ちなみに、ペアで参加する場合、ドレスとネクタイの色はお揃いにしておくのが通例となっている。また、女性は腕にリストコサージュをつけ、男性はジャケットにコサージュをつける。これは男女がバラバラで用意する場合もあるが、やはり統一感を持たせるために、どちらかがふたつとも用意するケースが珍しくない。
会場までは、パートナーの車や友人らと共同でレンタルしたリムジン、親の送迎で向かうパターンがある。ちなみに、筆者の友人で最も多かったのがリムジンのレンタルだ。
会場は、学校もしくは保護者が予約したホテルの会場や、学校の施設が多い。まれに船上なんてものもあるからかなり豪華だ。言わずもがな、私立や裕福な家庭の子どもが多い学校はプロムの規模も大きく派手な印象がある。ダンスパーティなので、事前にダンスの練習をする生徒もいるが、フォーマルなダンスよりも、ポップな曲に合わせて踊る方が増えてきているらしい。
プロムのお楽しみのひとつが、投票で選ばれるキングとクイーンだろう。外見がいいだけでなく、活動や人気の度合いなどが基準となって選ばれる。だが、チアリーダーやスポーツチームのスター選手といった目立つ生徒が選ばれる傾向があるため『シニアイヤー』では投票そのものを廃止したといった経緯が語られていた。また、『ミーン・ガールズ』でも、クイーンに送られたティアラを割ってみんなで分け合う様子が描かれている。プロムパーティが終わると、二次会が開かれる。