『フェイブルマンズ』でも重要なワンシーンに アメリカ青春映画頻出の“プロム”を解説
成人式と同じ規模かそれ以上
こう書くと、プロムは大掛かりな学校行事のひとつのようだが、保護者のサポートと学生の気合の入り具合は、日本の成人式と同じ、もしくはそれを上回るかもしれない。
親は、プロムに誘う手伝いや、衣装の用意、会場までの送迎、リムジンのレンタルといったサポートをすることが多い。金銭的負担ももちろんある。親が必死にサポートするのは、子どもがプロムに参加するのを心から喜んでいるからに他ならない。というのも、プロムは学生全員参加型のイベントではなく、基本的に誘われて参加するものだからだ。
前述したが、プロムは誘い誘われて参加する。恋人同士である必要はないが、ある程度の交友関係を築いていなければ声をかけてもらいづらい。つまり、プロムへの参加は、学生生活がある程度充実していたことを意味しており、保護者にとって、子どもがプロムに誘われたり、誘いを承諾してもらえたりするのは、喜びと安堵を同時に体験することになる。だから親は子どものプロム準備に積極的になり、子どももそんな親の愛情を全身で受け止める。映画に登場するプロムで何かが起こったとき、子どもは自分だけでなく親の期待や善意まで踏み躙られたと感じている場合が少なくない。悲劇的な出来事として描かれることが多いのはそういった背景があるためだ。
プロムの昔と今
学生生活を彩るプロムだが、男性が女性を誘ったり、キングとクイーンに選ばれるのが学校の人気者になる傾向があったりすることから否定的な見方をされる場合も無きにしもあらずだ。昨今は多様性を重視することから、女性から誘ったり、グループで参加したり、同姓で参加するケースも増えてきた。
Netflix『シニアイヤー』で見られた、キングとクイーンの廃止、学校生活全般の見直しといった大々的な変化はないにしても、プロムのあり方は微調整を繰り返している。
プロムが単なる卒業前イベントにとどまらないことを知れば、映画やドラマの見方や解釈の仕方が変わってくるかも知れない。
最後に、名前を出した映画以外でプロムが印象的だったタイトルを3つ紹介しておこう。
Netflix映画『ザ・プロム』
プロムに参加したいという少女の願いが中心となって物語が構成されたミュージカル映画。
『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』
大ヒットディズニードラマ『ハイスクール・ミュージカル』の締めくくりを飾ったのはプロム。この作品に限らず、子どもをターゲットにしたディズニーの作品にはプロムが登場することが多い。
『25年目のキス』
悲しい学生時代を送ってきた女性が、仕事で高校に潜入取材してプロムを楽しむ。忘れたい過去を楽しい思い出に塗り替えるイベントとしてプロムが存在する。
■公開情報
『フェイブルマンズ』
全国公開中
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
衣装:マーク・ブリッジス
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
配給:東宝東和
151分/原題:The Fabelmans
©Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://fabelmans-film.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp