『魔法使いの嫁』が描くのは綺麗な愛だけではない “依存”から自立へと歩み出すSEASON2

『魔法使いの嫁』第2期は依存から心の自立へ

 人生において、愛について悩むことはあっても、その答えは誰も直接的には教えてくれない。しかし、そんな困り事の答えを優しく導き、迷うたびに私たちに愛のヒントを与えてくれる作品がある。それが、ヤマザキコレ原作によるTVアニメ『魔法使いの嫁』(以下、『まほ嫁』)だ。

 4月6日から、5年ぶりのTVアニメシリーズとなる本作の続編『魔法使いの嫁 SEASON2』が放送開始される。人間と魔法使いという異なる存在の出会いと成長を描いた第1期では、女性向けエンタメ作品でムーブメントになっている「溺愛系」や「人外ジャンル」の要素を汲みながらも、枠にはまりきることなく“『まほ嫁』ならでは”の愛の物語を静かに描いてきた。

 「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる特殊な体質の持ち主である主人公のチセ。自分自身をオークションへ出品し、彼女を競り落とした魔法使いエリアス・エインズワースに弟子兼嫁として、引き取られるところから物語は始まる。

 不器用な2人が互いに理解し合い、お互いを補完し合うことで成長していくストーリー展開が原作から人気を集めている本作だが、そこにアニメならではの美しいアートワークが加わることにより、より緻密な魔法世界を作り上げることに成功した。魔法使いたちが扱う魔法の光の柔らかさや、妖精が舞う風景描写の細かいディテール、さらに口数が少ない代わりに、繊細な表情で語る場面が多いチセのキャラクターデザインも見事だ。

TVアニメ「魔法使いの嫁 SEASON2」 3rd Trailer/ The Ancient Magus' Bride SEASON 2

 第1期で、チセはさまざまなキャラクターとの交流を通して、愛情の多面性に触れた。誰かへ向けた真っ直ぐな愛、血の繋がった家族へ向けた愛、歪みが生じてしまった愛……。愛をテーマにしたエンタメ作品が古今東西さまざまな形で描かれ続けてきた中で、本作が目を引くのは「愛を受け入れることの難しさ」を描いた点にある。

 チセには、過去に家族から“愛されなかった”記憶がある。そのため、エリアスからの愛情も、いつか消えてしまうことに不安を抱いてしまうのだ。未来には薄れていくかもしれない愛情への恐れを吐露するチセの姿に、愛は影があるからこそ重厚に感じられることが本作では描かれている。

 そのうえ、エリアスからの深い愛に触れてしまったことにより、チセは自分が無意識に強欲だったことも突きつけられるのだ。エンタメだからといって綺麗な愛だけを切り取らない作品の姿勢と、その後に続く老齢のドラゴン・ネヴィンの言葉にさらに引き込まれてしまう。

「己をホイホイと捨てられるものみたいな、そんな風に低く見るということは、君に救われた我々をどうでもいいものと言っているのと同じだよ」

 愛を受け取るためには、まずは自分を愛さなくてはならない。そんなネヴィンの言葉を受け取ったチセは、エリアスからの愛を少しずつ受け取りながら、自身もエリアスへ愛を返そうと動き始めるのである。

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