劇場アニメ『らくだい魔女』は今の『きら☆レボ』『CCさくら』 大人女子の“あの頃”が宿る

『らくだい魔女』に宿る大人女子の“あの頃”

大人女子の心をくすぐる、『らく魔女』の“ちょっぴり初恋”

 劇場アニメ『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』を鑑賞した大人女子の中には、本作に描かれる“ちょっぴり初恋”に懐かしさを感じた人もいるのではないか。物腰柔らかでいつでも優しいお兄さん的存在のキースと、不器用ながらフウカをいつも側で気にかけてくれるチトセ。

 フウカを巡るこの三角関係は、まさに大人女子が子どもの頃に通ってきた作品のセオリーでもある。

 本作が大人女子の心をピンポイントでくすぐる理由は、『きらりん☆レボリューション』の風真宙人と日渡星司、『カードキャプターさくら』の李小狼と月城雪兎など、さまざまな作品で繰り広げられてきた「どっち派?」の議論のバトンを見事に受け継いでいるからだ。もどかしくも目が離せない、そんなトキメキにあの頃の自分がゆっくりと目を覚ます。

 しかしこの初恋の淡さは、時の流れによって失われてしまうものでもある。だからこそ、忙しい日々を送る大人女子へ、本作は水底へと引き摺り込むような強い引力を感じさせるのだろう。おっちょこちょいで愛くるしいフウカへの2人の男の子の思いは、ほんのり頬が染まるような“ちょっぴり初恋”を呼び起こし、大好きだった作品との思い出を優しく撫でる。劇場アニメ『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』は、大人だからこそ感じられる、感情への愛しさに溢れた新たな名作だった。

 物語の始まりでフウカは、闇の魔女であるメガイラの封印を解いてしまう。そしてこの時フウカは、私たちが無意識に封印してきた、大切なものが閉じ込められた扉の鍵をも壊すのである。

 劇場を出た時に私たちが手にするのは、本作だからこそ届けられる、観る人を選ばない魔法のギフトだ。子どもにとっては、初めての冒険と心ときめく初恋を。大人にとっては、かつてすぐ側にあったはずの小さな煌めきと新しい発見を。金の髪の小さな魔女から受け渡されたそれは、これからもずっと私たちの日常に潜む闇を照らし続けるのだろう。

■公開情報
『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』
全国公開中
キャスト:井上ほの花、田村睦心、石見舞菜香、小野賢章、佐倉綾音、日笠陽子、田中理恵、福山潤魚建、小西克幸、花守ゆみり、遠藤綾、白砂沙帆、岡本信彦
原作:作・成田サトコ/絵・千野えなが『らくだい魔女』シリーズ(ポプラ社刊)
監督:浜名孝行
脚本:吉村清子
キャラクター原案:千野えなが
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:杉田まるみ
美術デザイン:伊井蔵
プロップデザイン:高橋靖子
色彩設計:大塚眞純
美術監督:青井 孝、岡本好司
3D:髙賀茂寛人
撮影監督:柚木脇達己
編集:植松淳一
音響監督:小泉紀介
音楽:成田旬、山崎泰之
配給:ポニーキャニオン
アニメーション制作:Production I.G
製作:アニメ「らくだい魔女」製作委員会
©成田サトコ・千野えなが・ポプラ社/アニメ「らくだい魔女」製作委員会
公式サイト:https://anime-rakumajo.com/
公式Twitter:https://twitter.com/anime_rakumajo

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