『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』インタビュー
『映画プリキュア』で伝えたいこと 志水淳児監督が子どもたちへ送るメッセージ
現在公開中の『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』。本作は子どもも大人も笑顔になれるだけでなく最後には深い余韻も残る『映画プリキュア』シリーズ最新作にふさわしい作品だ。
TVシリーズ最新作『トロピカル~ジュ!プリキュア』(以下、『トロプリ』)と、2010年放送の『ハートキャッチプリキュア!』(以下、『ハトプリ』)がコラボレーションしたことでも大きな話題となっている。
監督を務めたのは、『映画プリキュア』シリーズの記念すべき1作目『映画ふたりはプリキュア Max Heart』や、TVシリーズでは『フレッシュプリキュア!』のシリーズディレクターも務めた志水淳児だ。
本項では、志水監督が本作を制作する上で意識したこと、子どもたちとその親に支持され続けるシリーズに込めた想いなど話を聞いた。(小林白菜)
「気をつけたのは“戦闘シーンを増やしすぎない”ということ」
ーー本作は子どもも大人も楽しめる素晴らしい作品でした。『トロプリ』と『ハトプリ』がコラボレーションした映画としても話題になりましたが、2チームのプリキュアが魅力的に活躍するために意識したことなどがあれば教えてください。
志水淳児監督(以下、志水):『トロプリ』の作品としてのスタイルが「みんなで賑やかにワイワイやる」といった感じなので、まずそれを活かすようにと考えました。
ーー特に注目してほしいシーンはありますか?
志水:雪合戦のシーンです。楽しい雰囲気の中で、2チームのひとりひとりのキャラクター性がよく分かるものになったと思います。このシーンでは挿入歌(Machico『大好きのSnowball』)が流れますが、先に歌が出来ていたんです。決まった尺の中でいかにキャラクターの魅力を詰め込むかが勝負だったのですが、上手くいったのではないかと思います。
ーー雪合戦のシーンといえば、いつの間にかくるるん(『トロプリ』の海の妖精)と『ハトプリ』の妖精たちが戯れていてほっこりしました。今回、くるるんが活躍するシーンはわりと多かったように思うのですが。
志水:くるるんは何もしない妖精なので、自分から何かをしようとして行動しないのです。それで「知らないうちに上手くいっちゃった」という展開を入れてみたんです。
ーーローラとシャロン王女が会話しているとき、ひとりで水の上をぐるぐる回っていたのも可愛かったです。
志水:シナリオの段階では、くるるんはずっと寝ているみたいになっていたんですけど、それだと寂しいなと思ったので、さりげなく動いてもらいました。
ーー志水監督が『映画プリキュア』を手がけるのは2015年春の『映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』から6年ぶりです。また、今回の映画制作はコロナ禍の真っ只中かと思いますが、制作現場には大きな変化などありましたか?
志水:やっぱりリモートでの作業が多くなりましたね。みんなで直接集まって作業するということはほとんどなくなりました。文章でのやりとりも多くなったので、お互いニュアンスが伝わりづらいという部分でちょっと苦労しました。
ーー6年も経っていると、アニメーション制作で最も変化するのは3DCGのクオリティではないかと思います。3DCGに対する意識についてはいかがでしょう?
志水:『映画トロプリ』はエンディングと背景作業の支援のみCGのため、そこは特に変わっていません。
ーークライマックスに5人で歌うシーンも手書きの作画でしたよね。歌と踊りにはCGを用いることの多い『映画プリキュア』としては珍しいように思いました。
志水:シナリオの意図として、シャロンの歌を受け継いで、これからローラたちが世界中に広げていくというものだったので、歌に込められたメッセージが伝わる表現として、あのような形になりました。
ーー『映画プリキュア』というと戦闘シーンのかっこよさやダイナミックさという部分に注目するファンも多いと思いますが、今回工夫したことがあれば教えてください。
志水:今回気をつけたのは「戦闘シーンを増やしすぎない」ということです。ひたすら戦う場面ばかりを盛り込んでも、それがお話の中でさほど影響しないものになっていることが、これまではあったように思ったんです。少年マンガ系の作品とは対象が違い、小さいお子様はバトルを怖がってしまうので、ひとつひとつに意味があって、それがないとお話が成立しないようなアクションになるように心掛けました。
ーーほかにも過去の『プリキュア』から趣向を変えてみた部分はありましたか?
志水:これまでの作品では話が複雑なものになっていることも多かったので、今回はひとつの分かりやすい大筋に沿って話が進んでいくように、枝葉を削ったシンプルな展開になりました。