俵万智が語る、『舞いあがれ!』妄想短歌への反響 “貴司”赤楚衛二にアドバイスするなら?
「短歌は誰もが手にできる表現手段」
ーー八木のおっちゃんは短歌を“海の底に咲く花”に喩えていましたが、もし俵さんが子ども頃の貴司に出会って、短歌について教えるとしたらどんな言葉を用いますか?
俵:えー、そうですね、なんでしょう……。上手に作ろうとしなくていいと伝えると思います。短歌というのは、どういうことを歌にしようかなと思いながら、自分の暮らしを見つめ直す時間が生まれることが素敵で、そこからもう歌作りは始まっているし、むしろ歌作りの一番尊いのってそういうところだと思うんですよ。貴司くんの短歌教室に集まっていた子どもたちも「どんなことを歌にしよう?」「こういうことが歌になるんじゃないかな?」と考える時間を持っていましたよね。だから、子どもたちにはその時間を楽しんでほしいなと思います。
ーー最近、若い世代を中心に“短歌ブーム”がきていると言われていますが、昨今の潮流をどうご覧になっていますか?
俵:そうですね。私も新聞や雑誌やいろいろなコンクールの選者をしているんですけど、応募する人がすごく増えているし、短歌に親しんでくれている人が増えているなっていうのは実感します。私は短歌が大好きなので、こんなふうに身近な表現方法の一つとして、みんなが短歌に親しんでくれているのはすごく嬉しいです。
ーー俵さんは歌舞伎町のホストが集まる「ホスト歌会」や、アイドルが自作の短歌を披露する「アイドル歌会」でも選者をされていますが、歌人以外の方が詠んだ短歌から刺激を受けることはありますか?
俵:ホストの子やアイドルの子たちから、自分が知らないその業界の言葉を知るのはすごく楽しいです。ホストだったら「シャンコ」とか「飛ぶ」とか、アイドルだったら「無銭がっつき」とか「ガチ恋口上」とか、全然わからないでしょう?(笑)
ーー全くわからないです(笑)。
俵:そういった業界用語を使って歌を作るのも面白いと思います。短歌っていうのは、特別な人が作るものじゃないと私は思っているんです。音楽だったら楽器という道具が必要だったり、絵だったら絵の具、写真だったらカメラとか、いろいろな道具や技術が必要になってくると思うんですけど、短歌の道具は言葉だし、技術は日本語が使えるっていうことだけなので、みんなもうスタートラインに立っているんですよ。そこに五七五七七っていう形があるので、その形を頼りにしていけば短歌は誰にでも詠めてしまうんです。だから、“歌人”と言うと特別な感じに思われるかもしれないけれど、誰もが手にできる表現手段として、もっと多くの人に手にとってほしいなと思っています。
ーーいよいよ『舞いあがれ!』が最終盤に突入しましたが、最終回に向けてどんなところに期待していますか?
俵:これからの展開が本当に楽しみで仕方なくて、1つは貴司くんが歌人として今後どうなるのか、もう1つは、この『舞いあがれ!』というタイトルがどういうふうに回収されるのかなというところに期待しています。やっぱり終わってしまうと思うと、要所要所の人たちにもう1回会いたいなと思いますね。なにわバードマンのみんなが揃ったらときめきますし、笠巻さん(古舘寛治)も大好きだったし、柏木さん(目黒蓮)とか大河内教官(吉川晃司)とか、それから五島にも会いたい人がいっぱいいるんですよ。それってすごくいいドラマの証だと思います。
■イベント情報
「舞いあがれ!感謝祭」
開催日時:3月31日(金)17:00開場/18:00開演/19:30終演予定
会場:東大阪市文化創造館(大阪府東大阪市御厨南2-3-4)
(交通:近鉄奈良線「八戸ノ里」駅下車、徒歩約5分)
主催:NHK大阪放送局
出演:福原遥、赤楚衛二、高橋克典、桑原亮子、俵万智、高瀬耕造
※イベントの模様はライブストリーミングでも配信
https://www.nhk.or.jp/livestreaming/maiagare/?cid=livemail01
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
2022年10月3日(月)から 2023年4月1日(土)まで
総合:8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK