ヘレン・ミレンが一番キュート!? 『シャザム!~ 神々の怒り~』続編として堅実な仕上がりに
絶賛正念場! DCEU! というワケで、DC映画最新作『シャザム!~ 神々の怒り~』(2023年)である。
魔術師に勇者と認められた少年ビリー(アッシャー・エンジェル)は、スーパーヒーローのシャザム(ザッカリー・リーヴァイ)に変身する力を得た。あのスーパーマンにも匹敵するパワーとスピードを有するも、しかし中身は10代のまま。同じ里親のもとで暮らす兄弟たちとヒーロー活動に励んでいたが、空回り感は否めない。そんなある日、突如として“アトラスの娘たち”と呼ばれる正真正銘の神様の娘たちが人間界に攻めてきた。果たしてビリーと仲間たちは、圧倒的な力を持つ神の娘たちに勝てるのか?
2023年1月、DCEUことDCエクステンデッド・ユニバースは、大人の都合で大きな局面を迎えた。撮影が終了していた『バットガール(原題)』がお蔵入りしたり、『ザ・フラッシュ』(6月16日公開)で主演を務めたエズラ・ミラーが警察沙汰を起こしたり……ゴタゴタが起きまくっていたDCEU。一方で、ユニバースと関係ない『ジョーカー』(2019年)や『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)が大ヒットするなど、状況は混乱の一途を辿っていた。そして先日、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)シリーズで知られるジェームズ・ガンが加わって、DCユニバースとして、ユニバース全体を仕切り直しすることが発表されたのだ。
こうした混乱の影響か、『シャザム!~神々の怒り~』は、前作『シャザム!』(2019年)に比べると、少々まとまりに欠ける映画になっている。前作はストレートな成長譚だった。根はイイけれど孤独な少年たちがスーパーパワーを介して友情を育み、ユーモラスでホラーな大冒険の末に少しだけ大人になる。前作は観ているだけで微笑ましい、優しい気持ちになれる映画だった。一方で本作は、主となるドラマ部分がブレていて、どこか散漫な印象だ(そもそも主人公のドラマが前作で完成されているので、仕方がないのだが……)。
ところがどっこい、そこを何とかするのが監督である。前作から続投のデヴィッド・F・サンドバーグは、あの『死霊館』(2013年)や『アクアマン』(2018年)で有名なジェームズ・ワンが発掘したホラー職人だ。今回は冒頭から「血さえ出なけば何やってもいいんですよね!?」と言わんばかりに、開き直り的な疑似ゾンビパンデミックと疑似人体損壊が炸裂。その後も矢継ぎ早にギャグを叩き込みつつ、サブキャラを中心にしたドラマで話を強引に進めていく。駆け足の感もあるが、それでも観客を退屈させず、続編として求められることを確実に消化していた。前作ほどの無邪気な楽しさはないものの、一定のレベル以上には仕上げてくるあたり、さすがは指定エンタメ映画作り集団ジェームズ・ワン組の人間である。