『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が超絶技巧で描く普遍的なテーマ
もちろんミシェル・ヨーのアクションも、とても還暦とは思えないキレキレぶりで大迫力だ。特に私は、最後の最後、彼女が慈愛に満ちた「構え」をとる瞬間、あまりの美しさにため息が出た。80~90年代に香港で死と隣り合わせの危険なアクションに身を曝し、その一方でアクションなしの映画でも活躍して……あのシーンには、そんな数十年に及ぶ彼女のキャリアの総決算があった。
地に足のついたシンプルでポジティブなメッセージを、超絶技巧で描いてみせる。何が何だか分からなくても、その熱意と勢いには圧倒されるだろう。ヘンテコだが、楽しくて、優しくて、凄くて、まっすぐな映画である。人生に疲れ、何もかもがどうでもよくなった経験がある人、もしくはどうでもよくなっている人にとって、この映画はきっと特別な一本になるはずだ。見終わったあと、もしかすると少しだけTHE BLUE HEARTS的な気持ちに、「人にやさしく」なれるかもしれない。
■公開情報
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス
配給:ギャガ
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