『エブエブ』3日間で100万ドル超え! 北米でアカデミー賞有力候補の再上映始まる
1月24日(米現地時間)、第95回(2023年)アカデミー賞のノミネーションが発表された。これを受けて、北米の映画興行はオスカーレースにいよいよ舵を切りはじめている。
1月27日~29日の北米週末ランキングは、変わらず『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(以下、『アバター:WoW』)が首位を守った。7週連続No.1という記録は、前作『アバター』(2009年)や、ヘンリー・フォンダ&キャサリン・ヘプバーン主演『黄昏』(1981年)に並ぶものだ。
本作の北米累計興収は6億2058万ドルで、まもなく『アベンジャーズ』(2012年)を抜いて歴代10位に。世界累計興収は21億1658万ドルで、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)を超えて歴代4位となった。ジェームズ・キャメロン自身の代表作『タイタニック』(1997年)を抜き、歴代3位まで上り詰めることもほぼ確実だ。ただし本作の止まらない勢いは、アカデミー作品賞にノミネートされたこととはおおよそ無関係だと言っていいだろう。
むしろ本稿で注目したいのは、放っておいてもメガヒット街道を驀進する『アバター:WoW』よりも、オスカーレースに向けて公開規模を拡大した、あるいは本公開時にはほとんど注目されなかったがここにきて反撃の狼煙を上げた、数々のアカデミー賞候補作品たちだ。今週の北米興行の面白味は、むしろランキングのトップ10以下にある。
作品賞を含む最多11部門にノミネートされた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、2022年3月25日の北米公開から約11カ月を経て、なんと1400館規模での再上映をスタート。もちろん配信リリース済みだが、週末3日間で101万ドルを稼ぎ出して第13位にランクインし、根強い支持を再びアピールした。A24史上最高のヒットとなった本作は、北米興収7102万ドル、世界興収1億512万ドル。オスカー最有力と言われるだけに、春にかけて人気をさらに再燃させる可能性もある。日本公開は3月3日だ。
『アバター:WoW』を除くと、作品賞候補のうち唯一配信が始まっていない『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は、公開館を553館追加し、3日間で同じく101万ドルを記録して第15位となった(前週比+167.3%)。脚色賞を含む2部門にノミネートされた本作は、2023年初夏の日本公開予定だ。
第13位の『エブリシング~』と、主演男優賞(ブレンダン・フレイザー)・助演女優賞(ホン・チャウ)など3部門候補の第14位『ザ・ホエール』、そして『ウーマン・トーキング』の週末興収はきわめて僅差。数値の確定時点で順位が入れ替わることは大いにありうるだろう。
スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『フェイブルマンズ』は、以前から伝えられていたように、公開12週目にして1015館を追加する拡大公開に踏み切った。オスカーレースを控え、なんと過去最大となる1962館での上映だ。週末興収は76万ドル(前週比+73.2%)で第16位、ここから巻き返しを図れるかは賞レースの結果にもかかっている。日本公開は3月3日。
第19位には、黒澤明監督『生きる』(1952年)をイギリスでリメイクした『生きる LIVING』が。本作はビル・ナイが主演男優賞、カズオ・イシグロが脚色賞にノミネートされている。北米配給を担当するソニー・ピクチャーズは、公開6週目で595館を追加(前週までは50館以下の小規模公開だった)。週末興収は58万ドルで、前週比+402.2%。ここにきて注目度をがぜん高めつつある。日本公開は3月31日。
第20位は、作品賞・監督賞・脚本賞ほか8部門9ノミネートの『イニシェリン島の精霊』。公開館を1050館追加し、1205館の再拡大上映だ。3日間の成績は35万ドルで、前週比+382.3%とこちらもなかなかの人気ぶり。日本でも1月27日にいよいよ劇場公開され、その完成度には映画ファンを中心に絶賛が寄せられている。強敵揃いのオスカーレース、どこまで食い込めるか。
第21位には、ケイト・ブランシェットが主演女優賞最有力と目される『TAR/ター』。こちらも公開館数を431館追加し、537館での上映で17万ドル(前週比+139.5%)を記録した。作品賞・監督賞・脚本賞など6部門にノミネートされている本作は、日本では5月12日公開だ。