『リバーサルオーケストラ』瀧内公美はコメディ演技も一流だ “幸薄い美女”役との振り幅

瀧内公美はコメディ演技も一流だ

 「瀧内公美が明るい!」と、思わず言ってしまいたくなる日々が続いている。現在放送中のドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)で、今までにないような明るい笑顔を見せているのだ。

 彼女が演じているのは、オーケストラに所属している主席のチェロ奏者・佐々木玲緒。恋愛至上主義者で、彼氏と別れたらヤケ酒を飲みドヨ~ンと落ち込み、新たに登場した売れっ子指揮者・常葉朝陽(田中圭)を見れば「世界を股にかける一流指揮者とうまくいけば、浮気男も見返せる。うん! 生きる気力が湧いてきた!」とロックオン。すぐさまアプローチをかけ始めるというマンガチックなキャラなのだが、これが驚くほどハマっていて自然に見える。

 なぜそこに驚きがあるのかというと、これまでに彼女が演じてきた代表的な役は、シリアスなキャラクターがかなり多かったからだ。

 瀧内は2014年公開の映画『グレイトフルデッド』、2017年の映画『彼女の人生は間違いじゃない』では主演も務め、高い評価を得ている。

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 だがこの2作での役柄は、老人を妬み襲う女性と、週末だけデリヘルのアルバイトをしている女性。どちらもとても“明るい”キャラとは言えない。

 また2019年の映画『火口のふたり』では柄本佑とW主演でヒロイン役を務め、第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞などを受賞。

 10日後に結婚式の予定を控えながらも、若い頃に奔放に体を重ねたいとこへの抑えきれない感情に、「今夜だけ」「5日間だけ」と身を任せていく女性・直子を演じた。極端に暗いキャラクターではないものの、やはり翳りを帯びた役だった。

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 極めつけは2020年の映画『アンダードッグ』。瀧内が演じたのは、娘を養うためにデリヘル嬢の仕事をしているシングルマザー(主演のボクサー役・森山未來が、そのデリヘルの送迎をしている)。恋人とも呼べないようなDV男がいるにはいるが、希望と呼べるものが何ひとつないような生活の中で、次第に娘を虐待するようになる……と、書いていても苦しくなるような、観ているのが辛い哀しい女性の役だった。

 ほかにも軽やかで明るい役も演じているはずなのだが、筆者には、一時期の木村多江、奥貫薫に続く、幸薄(さちうす)美女だと強く印象づけられていた。また今どき珍しいくらい濡れ場も数多く体当たりで演じていて、覚悟の決まっている女優だと感じていた。

 だからこそ、『リバーサルオーケストラ』での迷いのないコメディエンヌっぷりが新鮮なのだ。彼女の笑顔が新鮮に感じるくらい、過去のシリアスなキャラクターが真に迫っていたという事だ。

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