『舞いあがれ!』あまりにロマンチックな福原遥と赤楚衛二 朝ドラの名告白を振り返る

『舞いあがれ!』など朝ドラの名告白シーン

 連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第20週となる「伝えたい思い」が放送された。長い間、視聴者をやきもきさせていた舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)の恋がとうとう成就する。幼なじみとして育んできた2人の想いは、秋月史子(八木莉可子)やリュー北條(川島潤哉)の思わぬアシストにより大きく実を結ぶ。あまりにロマンチックな恋の顛末は、多くの視聴者に驚きと感動をもたらしただろう。

 短歌が書けなくなってしまった貴司は、「思いをぶつけろ」と発破をかける北條に対して「心の奥をさらけ出すのが怖い」と本音を吐露する。貴司もまた舞と同様、気持ちを伝えることで今までの関係が壊れてしまうことを危惧していた。

 だが貴司は、舞に対しての想いを全く伝えてこなかったわけではない。あふれる心の内を短歌に託し、密かに舞の元へ届けていたのだ。そして、それを見抜いたのは、皮肉にも貴司に想いを寄せる史子だった。「私は先生と繋がっている」と豪語する史子だからこそ、300首の中にたった1首だけ紛れていた貴司の恋心を見つけ出せたのだろう。そしてそれが“本歌取り”という手法により燃え上がるような恋の歌を取り入れたものだということにも気付いていたのだ。

 その歌こそが<君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた>という短歌である。元はといえば、五島にいたころの貴司が舞に贈った星空の絵ハガキに書き添えられていたものだ。その頃の舞はパイロットの内定を辞退しIWAKURAの再建を目指すという人生の岐路にいたため、この歌は一見すると舞への応援の歌だと捉えられる。しかし実際には、あふれ出す恋心を詠んだ相聞歌だったのだ。

 史子からそのことを知らされた舞は、貴司の元へと走り出す。そして想いを伝えあった2人は夜の公園で固く抱き合った。互いの気持ちがやっと通じ合った尊さは何物にも代えがたい輝きを持つ。よく晴れた高い空の元で夢に向かって努力してきた舞も魅力的だが、千億の星に照らされる夜空の下でやっと自分の心と向き合うことができた舞もまた素敵だ。舞と貴司の奥ゆかしい恋愛が今、はじまる。

 思い起こせば近年の朝ドラにも心に残る恋の告白シーンがあった。朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)のヒロインの一人、るい(深津絵里)とジョーこと大月錠一郎(オダギリジョー)のシーンは特に印象的だっただろう。「僕はサッチモちゃんのことが好きなんや」とジョーから告白を受けたるいだが、幼い頃に付いた額の傷を気にするあまり応えることができなかった。数日後、るいは勇気を振り絞って店の試着室の鏡越しに傷を見せる。それを見たジョーは動じることなくそっと額をなでて抱きしめたのだ。るいのことをありのまま受け入れるジョーの深い愛が感じられる名シーンであった。

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